ニュース 経済

「LNGと再エネでグローバルリーダーに」JERA小野田聡社長

JERAが運行するLNG船
JERAが運行するLNG船
その他の写真を見る(1/5枚)

 世界最大級のエネルギー会社が誕生した。その名は「JERA(ジェラ)」。東京電力フュエル&パワーと中部電力が50%ずつ出資するエネルギー事業の合弁会社だ。この4月、東京電力と中部電力の国内火力発電事業の統合を完了。大手電力会社の基幹事業の統合は初めてとなる。

 その規模を見てみよう。2019年度の連結売上高見通しは3.6兆円、総資産は3.8兆円、従業員数は4500人に上る。国内火力発電所は26カ所(建設中含む)、総発電容量6700万kWは国内火力全体の約半分を占める。液化天然ガス(LNG)の取り扱い規模は世界最大級の年間約3500万トンに達する。

JERAの事業概要
JERAの事業概要
その他の写真を見る(2/5枚)

 利益についても、2025年度には、昨年度の10倍以上となる2000億円の純利益をめざす野心的な目標を掲げる。また、今回の統合の効果として、5年以内に年1000億円以上を創出することを見込んでいる。

 そうした中、JERAは「世界のエネルギー問題に最先端のソリューションを提供する」というミッションを新たに掲げた。4月に社長に就任した小野田聡氏に話を聞いた。

JERAの特徴

小野田 JERAの最大の特徴は、燃料の上流開発から調達、輸送、貯蔵、発電、そして電気を売るという、いわゆる”バリューチェーン”を全て備えていることです。バリューチェーン全体を俯瞰し上流から下流への流れを活す業務運営で合理的かつ効率的にエネルギーをお届けすることが可能となりました。その中で、お客さまのニーズに合うソリューションを提供していく。「世界中のエネルギー問題に最先端のソリューションを提供する」というミッションは、このようなことを意図しています。

--バリューチェーンが上流から下流まで繋がったことで、JERAの強みを生かした、これまでにない新しいソリューションの提供も期待できそうだ。

小野田 まずは、これまでの経験をベースにサービスを発展させていきたいと考えています。私たちは「LNGと再生可能エネルギーでグローバルリーダーを目指す」という25年に向けたビジョンも示しています。出力が不安定な再生可能エネルギーを、化石燃料の中では最もクリーンなLNGで補完することを意図しています。加えて、再生可能エネルギーもLNGもエネルギー事業という中では、最も市場成長率が高い事業だと認識しています。すなわち、成長市場であり補完関係である2つの事業をJERAの柱としていきたいと考えています。

--一方、地球温暖化防止の潮流の中、石炭火力発電への風当たりが厳しくなっている。

小野田 温暖化防止のために、中長期的な二酸化炭素の削減は絶対に必要であると認識しているため、前向きに取り組んでいきたいと考えております。その一方で、「エネルギーを安全に、安価に、安定して届ける」という私たちの使命を達成するためには、安定供給や経済性に優れたベースロード電源である石炭火力をきちんと運転していくことが重要です。加えて、再生可能エネルギーの開発や、蓄電池等の新技術の導入、調整力としてのLNG火力を運用する必要があります。どれか一つの電源だけに偏るのではなく、当社の発電資産をバランスよく形成することで、お客さまに安価で安定的なエネルギーを届けることができると思っています。

JERA小野田聡社長
JERA小野田聡社長
その他の写真を見る(3/5枚)

--JERAは強みを生かすため、4月に組織を再編した。どんな効果を期待しているのだろうか。

小野田 従来は、発電部門や燃料部門など分野別に分けた組織でしたが、機能別に3つの本部に再編しました。具体的には、発電所の新設や建て替えなど事業資産の管理・改善を担う「事業開発本部」、設備の運用や保全を担当する「O&M本部」(Operation&Maintenance)、燃料調達や電力ガスの売買を行う「最適化本部」です。

 例えば、最適化本部は調達から販売までの流れを一体的かつ、弾力的に管理することで、収益を最大化できると考えています。一元化したバリューチェーンの強みを最大限に発揮するのが今回の狙いです。

LNGバリューチェーンを活かした事業

--従来、LNGの契約は、「仕向け地条項」に制限があるものが多かったが、この条項の制限をなくした契約が徐々に増えているという。

小野田 仕向地に制限のない契約が増えてくると、調達したLNGを様々な場所で使えるようになります。今後の日本の電力需給は、人口減少による需要の停滞や、再生可能エネルギーの導入拡大などにより、見通すことが困難になっています。そのような中で、LNG火力発電は調整力として活用されることになると考えていますが、燃料となるLNGを過不足なく調達するためには、自由度を高めておくことが必要です。また、仕向地の制限がなければ、将来的にアジアでLNGを買いたいという方に対し販売することも可能になります。

--LNG需要は世界的に拡大している。アジアでもシンガポールやバングラデシュは既にLNG輸入国であり、さらにフィリピンやベトナムもそれに加わる。JERAの事業拡大にも追い風だ。

LNG需要国の拡大 出典)資源エネルギー庁 「LNG市場戦略の進捗状況と 今後の取組について」
LNG需要国の拡大 出典)資源エネルギー庁 「LNG市場戦略の進捗状況と 今後の取組について」
その他の写真を見る(4/5枚)

小野田 当社は”Gas to Power(ガス・ツー・パワー)”というサービスの提供を目指しています。これは、LNGを調達し販売するだけではなく、発電所やLNG基地もセットで導入していただくことを指しています。さらに、当社にはこれらの設備のオペレーションやメンテナンスの実績もあるため、一緒に請け負うことも提案していきたいと思います。例えば、東南アジアに小規模なLNG基地とガスタービン発電所をセットで建設すると、新たなLNGの需要や雇用が生まれ、それらを通じて地域の発展に貢献することもできます。

--最近では北米からシェール由来のLNGが日本に輸入されたりしている。調達先の多様化も今後加速していきそうだ。

小野田 今までは長期契約の比率が高かったのですが、中期や短期、スポットといった調達手段を組み合わせたり、調達国を多様化するなどして、LNGのポートフォリオを最適化してきたいと思います。

再生可能エネルギーでもグローバルリーダー

--JERAは再生可能エネルギー分野でもグローバルリーダーを目指すとしている。

小野田 イニシャルの価格や、ランニングコストも抑えた、競争力のある再生可能エネルギーの開発を目指していきたい。そう考えると、どの電源を重視していくのかは自ずと決まってきます。太陽光は基本的にスケールメリットが出にくい。一方、洋上風力は大型化によりコストパフォーマンスが高まります。昨年12月には、イギリスと台湾の洋上風力発電への参画を決定いたしました。

 また、ガスタービン火力発電では、海外の大型案件を様々な地域でやっています。過去の実績や経験から、大きなプロジェクトをまとめていくノウハウを持っているとともに、北米や東南アジアにある拠点を活用しながら、プロジェクトを展開していけるのが、JERAの強みです。

--様々なチャレンジに挑むJERA。今後ますます多様な人材が必要になってくるという。

小野田 技術はブレイクスルーすると急に伸びます。早くから取り組み、置いていかれないようにしなければなりません。

 今は、火力発電に携わる技術者集団が3700人おり、そこがベースになると思います。今後必要となる様々な分野の専門家に来てもらうことも考えていますが、当社の特徴は、社員が様々なことにチャレンジできることですので、これらを通じた社員の成長に大いに期待しています。

インタビューに答える小野田社長
インタビューに答える小野田社長
その他の写真を見る(5/5枚)

JERA の未来

--最後に小野田社長に決意を聞いた。

小野田 4月1日の就任時に、社員のみなさんには、聖徳太子の「和を以て貴しとなす」ということを伝えました。これは、さまざまな意見を持つ人たちが、お互いの意見を尊重しながら、よく話し合って物事を進めていこう。まず和を大事にしていこうということです。

 火力発電所で働く社員は、オペレーションやメンテナンスの技を極めようと、日々、改善活動に取り組んでおり、その手法やノウハウを「JERA O&M Way」(Operation & Maintenance:運転・保守)として確立しようとしています。JERA O&M Wayは国内外のお客さまへの販売や、あるいは実際に発電所を持つお客さまの社員の研修など、いろんな使い方ができます。このO&Mに磨きをかけるということは、社内共通の目的となっていて、同じベクトルで仕事をしているので、着実に進歩していると思います。

 もう1つは、「吹毛常磨(すいもうつねにます)」ということです。吹毛というのは、吹きかけた小さな毛をも切るほどのとても切れ味のいい剣を言います。でも、どんなにいい剣でも、常に磨いていなければすぐに切れ味が悪くなってしまいます。この言葉は、努力を常に続けなさい、修行に終わりはない、という意味です。今やっていることで終わりじゃない。常にどんどんステップアップをしていこう、ということも話しました。

--JERAのこれからの業務は、新しいものへの挑戦そのものだ。社員にとってものすごくチャレンジングだと感じる。

小野田 現在、当社の事業の基盤となっている海外発電や燃料のトレーディングは、当時の電力会社にはない全く新しい事業でした。例えば、海外発電事業への参画は、高度経済成長に伴う電力需要の増加に合わせ、多くの発電所を建設したノウハウの一つの活用として、新たにチャレンジしたという側面もあります。当時の火力発電所の技術者達は、慣れない海外での事業に苦労したと思いますが、大きな成果を上げてもらえました。こういう実績があるので、再生可能エネルギーなど新しい事業を展開していくときには、みなさんきっと力になってくれると期待しています。

--読者からしてみると、電力事業というのはある程度落ち着いていて、新しい領域に挑戦していく、というイメージは希薄かもしれない。しかし、話を聞いていると全く逆のようだ。

小野田 人口減少が進む日本では将来的にエネルギー需要が停滞すると言われています。その状況の中で、新しい事業を求めていこうとすると、国内だけではなく、海外で新しいことに挑戦する意味があると思います。

 ただ単に設備をつくって、エネルギーを届けるというやり方ではなく、各国に雇用が生まれ、その人達が地域をよりよくしていくためのリーダーになるお手伝いをしたいです。地域の発展と共にJERAが海外の皆さんにサービスを提供できる。そういう理念で行けば、新しい事業領域が様々な国の方たちにも受け入れてもらえるのではないかと思っています。

(エネルギーフロントライン編集長・安倍宏行)

提供:中部電力株式会社

ランキング