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【経済インサイド】「江戸っ子1号」 ものづくりの技で海洋権益守れ 深海に挑む

東京と千葉の町工場が共同開発した無人海底探査機「江戸っ子1号365」=2月19日、千葉市中央区の千葉港(JAMSTEC提供)
東京と千葉の町工場が共同開発した無人海底探査機「江戸っ子1号365」=2月19日、千葉市中央区の千葉港(JAMSTEC提供)
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 宇宙と並び未知の領域が広い海。特に水深が数千メートルにも及ぶ海の底に、どんな世界が広がっているのかは専門家の間でもあまり知られていない。その深海に共同開発した無人海底探査機「江戸っ子1号」で挑んでいるのが、東京や千葉の中小企業。平成25年11月には千葉県房総半島沖の日本海溝、水深8000メートルに挑み、同7840メートルで深海魚の撮影に成功した。この実績をひっさげて新たに乗り出したのが、1年間にわたる長期海底観測だ。

 ■ガラス球で調査

 2月20日午前、数人の関係者による見送りを受け、1隻の船が千葉港から出港した。船には、江戸っ子1号を改良した海洋研究開発機構(JAMSTEC)の無人海底観測装置「江戸っ子1号365」6基が積まれた。

 この装置は高さ165センチで重さは約250キロ。その中には(1)ハイビジョン対応のビデオカメラ(2)ライト(3)GPS(全地球測位システム)が装着された通信ユニット(4)電池-を組み込んだ計9個のガラス球が入っている。船が向かう先は本州から1800キロ離れた東京都小笠原村の南鳥島。この島の周辺海域に装置が船から投下される。投下後は1日3回、各1分間ずつ、海底の様子を撮影。およそ1年後に引き上げる。

 その際は船上から音波で切り離しのための信号を送信。装置がそれを受信すると、電流で錘(おもり)から切り離され装置が浮上する。浮上後はGPSで装置の位置情報を船に伝え、回収を待つというのが一連の流れだ。

 江戸っ子1号365は東京都と千葉県の中小企業が連携して開発した。ガラス球は特殊ガラス開発製造の岡本硝子(千葉県柏市)、それを覆うプラスチックカバーは真空成形加工を手がけるバキュームモールド工業(東京都墨田区)、錘の切り離し装置は精密試作加工のパール技研(千葉県船橋市)が担当した。

 江戸っ子1号の開発が始まったのはリーマンショックの影響で景気悪化が深刻だった21年5月。大阪府東大阪市の中小企業が共同開発した小型人工衛星「まいど1号」の成功に触発された特殊ゴム開発の杉野ゴム化学工業所(東京都葛飾区)の杉野行雄社長が「大阪が宇宙なら、江戸は深海だ」と、取引先の東京東信用金庫の担当者に話したのがきっかけだ。

 自走式の深海探査機の開発を考えており、試算によると開発費は2億円以上に達した。当初は10社ほどが賛同していたが、景気の悪化で「とてもわれわれには開発できるものではない」と次々と離れていった。そんななか、JAMSTECから「ガラス球によって何度も繰り返し活用できるようにすれば、コストが下げられるのでは」との提案があり、岡本硝子が24年からチームに参画。開発は一気に進んだ。

 ■深海を30時間撮影

 そして翌年11月に房総半島沖の日本海溝で行われたプロジェクトでは、ハイビジョンカメラによって深海の世界を30時間にわたり撮影することに世界で初めて成功した。

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