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知っていますか?「経営者保証ガイドライン」 中小機構が「男前無計画経営者」公開中

 「経営者保証に関するガイドライン」をご存じだろうか。中小企業経営者が金融機関から融資を受ける際や保証契約を履行する際の個人保証の取り扱いについて、中小企業経営者や金融機関が守るべきルールをまとめたものだ。経営者が知っておくべき重要な内容が記されているが、中小企業経営者の認知度は今一つだという。中小企業の経営を支援する独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)がユニークな動画を制作し、中小企業経営者に対するガイドラインの認知度アップに乗り出している。

こんな経営は×!

 中小機構が今年1月に配信した動画のタイトルは、「男前無計画経営者」。

動画「男前無計画経営者」
動画「男前無計画経営者」
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 舞台は下町の商店街。そこに店を構える「株式会社 男前青果店」の社長がこの動画の主人公だ。スリーピースのスーツにイタリアンカラーの派手なシャツをまとい、頭にはせり帽、腰には前掛けという風貌で、店の前で箱に足をのせ、ポーズを決めている。ムーディーなトランペットのBGM。どこか昭和30年代の日活映画を彷彿 (ほうふつ)とさせる雰囲気だ。

 動画には、主人公の「男前」な経営者像がユーモアたっぷりに描き出されている。「仕入れは高級スポーツカー」「裕次郎ルックで仕事をする」「近所の子供、奥さんに気前がいい」「従業員のサボりに太っ腹」。確かに「男前」ではあるが、経営は無計画。私生活は浪費だらけの挙げ句、最後に妻の肩を抱きながら発した言葉は…。相当誇張はされているが、どこか近くにいそうな人物でもある。

 コミカルな動画には、この男前だけど無計画な経営者とは反対に、普段から健全な経営に取り組み、経営改善を図れば、「経営者保証ガイドライン」に基づいて、個人保証を提供せずに、金融機関から新規融資が受けられるチャンスがある、という中小機構からのメッセージが逆説的に込められている。

狙いは経営者への認知度アップ

 「それだけではありません。経営改善を図ることで、既存の融資に付けられている保証を解除することもできます。また、経営に行き詰まってやむを得ず会社を清算をするといった場合にも、それまでの誠実な経営の度合いでガイドラインが適用され、破産せずに済み、場合によっては自宅や生計費などの資産を残すこともできるのです」。こう語るのは、中小機構事業再生支援センター事業再生支援課の村上裕二郎課長だ。

 「経営者保証ガイドライン」は2013年12月、金融庁と中小企業庁の関与のもと、日本商工会議所と全国銀行協会が「紳士協定」として策定した自主ルールだ。法的な拘束力はないが、金融機関、中小企業経営者の両者が尊重・順守することが約束されている。

 中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者として個人保証を求められることが多い。しかし、事業が立ち行かなくなり会社をたたむといった局面では、過度な個人保証は、経営者の生活を圧迫し、最悪の場合、経営者が自己破産を余儀なくされるケースに陥ってしまう。それを危惧して、早期の事業再生や債務整理を躊躇する経営者もいる。また、自己破産をすれば信用登録機関に登録され、その間金融機関からお金を借りることが出来ず、再チャレンジが非常にしにくい。そのため、経営者保証への過度の依存は、中小企業の思い切った事業展開や事業承継を阻害し、金融機関にとってもマイナスに働いていることから、中小企業の経営の健全化や事業意欲の増進を図り、ひいては日本経済の活性化に資する目的で、このガイドラインが策定された。

 ガイドラインでは、金融機関に個人保証に依存せず中小企業に融資するよう促す一方、中小企業経営者にも経営改善の努力をするよう求めている。

 ガイドラインの策定からすでに5年以上が経過しているが、中小機構が2018年1月、全国の中小企業約1万社に対して実施した認知度調査では、ガイドラインについて「聞いたことも、見たこともない」という回答が52.4%と半数以上を占めた。ガイドラインの認知度がなかなか上がらないことに対する中小機構の危機感は強く、今回の動画によるPR作戦に乗り出したという。

中小機構事業再生支援センター事業再生支援課の村上裕二郎課長
中小機構事業再生支援センター事業再生支援課の村上裕二郎課長
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経営の求められる3要件

 では、ガイドラインの適用を受けるには、どんな経営をすればいいのか。村上課長によると、求められる要件は大きく分けて3つあるという。

(1)会社と経営者個人の資産や経理などの関係が明確に区分されていること

(2)財務基盤が強化されていること

(3)財務状況が正確に把握され、情報開示によって経営の透明性が確保されていること

 まずは、前提として経営改善に向けた中小企業経営者の努力が必要で、その取り組みによって、金融機関は会社の正確な経営状況を把握できる。会社の資産や収益力の向上にもつながり、それによって、金融機関は個人保証によらない融資での取引に臨むことができるという。

 また、たとえ個人保証が課せられていても、ガイドラインの要件である金融機関への正確な財務状況等の情報の開示などに日頃から取り組んでいれば、万が一、会社を整理しなければならない時でも、自己破産を回避でき、場合によっては家も残る可能性がある、ということがガイドラインで定められているわけで、過度に保証を負担に感じることも減り、経営にも積極的になれる。経営状況が少し悪くなった時でも、事業再生に早期に取り組めるようになる。さらに言えば、ガイドラインの要件獲得に取り組むこと自体が、経営を改善し、強くするので「経営者がガイドラインを知っておくメリットは非常に大きい」と村上課長は訴えている。

 金融庁の公表ではガイドラインの活用事例は着実に増えている。民間金融機関での実績をみると、2017年度は約62万4000件で前年度比11.8%増加。また、ガイドラインに基づいて保証債務整理を実施した件数は2017年度294件と同25.1%増加しているという。

 中小機構では、この動画とともに経営者保証ガイドラインについて詳しく解説したサイト(http://hosyo.smrj.go.jp/ )を開設しているほか、ガイドラインについて専門家がアドバイスをする「ガイドライン専門家派遣制度」も展開している。これは、中小機構に登録している弁護士や会計士、税理士といった専門家が無料で相談者の会社や自宅に派遣され、経営者保証に関する相談に応じるもの。各企業の経営状況に応じ、オーダーメードでアドバイスをしてくれるという。また、相談状況に応じて、3回まで派遣が可能だ(今年度は3月10日の派遣まで有効)。専門家派遣については、中小機構事業再生支援センターのほか、各地域本部で相談を受け付けている。

 ガイドラインを知らないまま経営を続けていた中小企業の経営者にとっては、ガイドラインを知り、ガイドラインの要件に取り組みだすことで、事業の拡大や経営の負担軽減、事業承継など新たな活路を見いだすきっかけになるかもしれない。中小機構に相談してみてはいかがだろうか。

「経営者保証に関するガイドライン」ポータルサイトはこちら

中小機構ホームページはこちら

(提供 中小企業基盤整備機構)

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