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【高論卓説】日本の中のイスラム社会 彼らを正しく理解しているか 

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ハラール推奨メニューを味わうイスラム教圏からの留学生ら
ハラール推奨メニューを味わうイスラム教圏からの留学生ら

 奈良時代から日本にはシルクロード・中国を経てイスラム文化のかけらが入っていたという。が、1000年以上たった今でもイスラム文化はいまだに私たちにはなじみが薄い。イスラム(宗教)なりムスリム(教徒)に対する私たちの認識も極めて貧弱である。さらに、不幸なことに、私たちが日常メディアで接する「イスラム」という言葉の修飾語には「過激派」とか「爆破」とか「テロ」とかの事件に関するネガティブなものが多い。

 一方、現在国内には五十数カ国出身の10万人以上のムスリムの人々が暮らしている。彼らは国内で真面目に働いており、子供たちは近隣の学校に通っている。しかしリビア、シリアで蜂起した過激派が自らを「IS(Islamic State)」と呼び、日本人ジャーナリストを殺害する事件が勃発、しかもそのISを日本のメディアが「イスラム国」と訳してから日本に居住するムスリムの人々の生活は一変した。

 ISをイスラム国と聞いて、日本人の多くがイスラムの国々は過激派集団と関係があると混同したのだ。結果としてイスラム教徒は怖い人たちという間違った固定観念が定着した。さらに、ムスリムたちが働く国内の職場でも、子供たちが通う学校でもいじめが始まり、女性はヒジャブ(スカーフ)を着用しているだけで奇異の目で見られたり差別されたりした。これは日本に住むイスラム教徒にとっては大変悲しく迷惑な話であったろう。

 例えば、オウム真理教事件の後に世界の人たちが「日本人は怖い」などと言い出したら、私たちは当然「ちょっと待ってよ、あんたは分かっていない」と言うだろう。日本に住むムスリムたちの思いも同じであったに違いない。ISという、ごく一部の過激派を「イスラム国」と訳し、あたかもイスラム圏の国々と過激派が同一であるかのような誤解を与えてしまったのだ。

 東京・代々木上原に国内最大のモスク「東京ジャーミイ」がある。ここの指導者の一人、グフロン・ヤジッドさんによれば、中東での血なまぐさい事件とは裏腹に最近モスクへの日本人見学者が増えているという。特に中高生が修学旅行のプログラムの一環として訪れるという。

 毎回、ヤジッドさんが初めに生徒たちに聞く質問がある。「イスラムに対する今の正直な気持ちを教えて」だ。生徒たちからは「怖い人たち」とか「暴力的」くらいならまだしも、「人殺し」などという子もいると言ってヤジッドさんは悲しそうに笑う。

 だが、生徒たちは気高く美しく荘厳なモスクの中で時を過ごし、イスラムの教えでは他人に危害を加えることは認めず、人の生命、尊厳、信仰、財産は何人といえども不可侵のものであるというヤジッドさんの話を聞くにつれ緊張していた生徒たちの顔にも安堵(あんど)の色が浮いてくるそうだ。「外国人受け入れ拡大政策」とともに今後国内のムスリム人口も増えていくだろう。

 ユネスコ無形文化遺産に登録された和食やおもてなし文化が世界一であると日本文化に誇りを持つことは結構なことである。が、私たちは小さな国内のことだけにとどまらず、少なくとも異文化に興味を持ち、最低限それを理解することも必要である。その意味でもモスクを見学し、話を聞き、異文化教育を実施している学校が増えているということは大いに注目に値する。

               ◇

 ひらまつ・こうぞう 実業家。アメリカン大学卒。ソニーを経て、アメリカン・エキスプレス副社長、AOLジャパン社長、弥生社長、ライブドア社長などを歴任。2008年から小僧com社長。他にも各種企業の社外取締役など。北海道出身。

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