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【高論卓説】製造強国への転換目指す中国 ハイテク覇権握る米国、日本抱き込み阻止 渡辺哲也氏

首脳会談を行う安倍晋三首相(左)とトランプ米大統領。対中国でも緊密に連携する両国だが=9月26日、米ニューヨーク(AP)
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 世界の工場である中国。しかし、その実態は脆弱(ぜいじやく)であり、いまだ組立工場から脱却できていないのが現実である。特に半導体分野でそれが顕著であり、世界の6割近い半導体を消費する中国であるが、その8割弱を輸入に頼る構造になっている。だからこそ、習近平国家主席は自らの肝いり政策「中国製造2025」で半導体を中核事業とし、2014年に立ち上げた国家集成電路(集積回路、IC)産業投資基金に18兆円もの巨額な資金をつぎ込み、国策事業として3社が半導体生産工場を作り始めた。

 その3社は、09年に破綻したドイツの半導体大手キマンダを継承した紫光集団(ユニグループ)配下の長江ストレージ、台湾聯華電子(UMC)と技術提携している晋華集成電路(JHICC)、米マイクロン・テクノロジー傘下、台湾華亜科技(イノテラ・メモリーズ)の技術者を大量に引き抜いてつくられたRuiLiである。

 マイクロンは昨年、RuiLiおよびUMCとJHICCに対して技術流出の容疑で訴訟を起こした。本来、どちらの企業も「DRAM」(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)を生産したことがなく、技術を持っているわけがないからである。

 それに対して今年1月、UMCは中国国内で特許侵害の疑いでマイクロンを提訴。8月には福州市中級人民法院がマイクロンに対して、DRAMやスマートフォンやデータセンターのデータ保存に使う「NAND型フラッシュメモリー」などの生産・販売差し止めを命じた。マイクロンの売上高の51%は中国向けであり、これはマイクロンにとっての死活問題である。また、ハイテク分野の維持に必死な米国政府にとっても、許しがたい事態であるといえる。

 そして、ついに米国政府は伝家の宝刀を抜いたのであった。10月29日、米商務省は、JHICCを米国の製品やソフト、技術の輸出を制限する「エンティティーリスト」に加えた。このリストに掲載された場合、米国政府からの輸出許可を取得しない限り輸出が停止される。また、技術の利用なども制限を受けることになる。

 半導体は米国企業の生産機械や技術がない限り、生産ラインを構築することはほぼ不可能なため、JHICCは操業できない状態になった。また、今後、UMCに対しても何らかの制裁が加えられる可能性もあり、イノテラから人材と技術を奪ったRuiLiにも同様の処置が取られる可能性がある。

 既に米中の貿易戦争は、単なる貿易赤字の問題ではない。世界における米国の覇権を維持するための戦争に移っており、政府だけでなく、企業に対しても米国を選ぶのか中国を選ぶのか選択を迫る段階に入っている。

 9月の日米共同声明でも「日米両国は、第三国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する。したがってわれわれは、世界貿易機関(WTO)改革、電子商取引の議論を促進するとともに、知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲(わいきよく)的な産業補助金、国有企業によって創り出される歪曲化および過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため、日米、また日米欧3極の協力を通じて、緊密に作業していく」との文言が入れられた。

 これを破った場合、日本企業に対しても中国同様に関税をかけていくとした。今回の場合は、あくまでも中国企業と台湾、米国政府の問題ではあるが、これは他山の石ではなく、日本企業にも同様の処置が取られる可能性を示唆したものである。

   ◇

 渡辺哲也(わたなべ・てつや) 経済評論家。日大法卒。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。著書は『突き破る日本経済』など多数。愛知県出身。 

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