PR

ニュース 経済

【産経抄】9月5日

Messenger

 「青田買い」は本来、「稲が成熟する前に、収穫を見越して先買いすること」である。企業が人材獲得のために、卒業前の学生を早期に採用する。この意味で使われるようになったのは、高度成長期からだ。

 ▼就職活動の基本ルールである「就職協定」は、昭和28(1953)年に始まった。ところが35年ごろから、企業側と大学側の申し合わせが公然と破られ、社会問題化する。やがて「早苗買い」「種モミ買い」などとエスカレートしていく。

 ▼経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)の発言が、波紋を広げている。新卒学生の採用に関する指針を廃止すべきだ、との考えを示した。正式に決まれば、平成33(2021)年春入社の対象となる現在の大学2年生は、ルールのないまま就職活動を行うことになる。

 ▼いくつかの新聞は、「青田買い」の見出しを付けて伝えていた。もともと、経団連に加盟していない外資系企業などは、ルールに縛られていない。罰則がない「紳士協定」とあって、経団連メンバーの大手企業の間でも、優秀な学生を囲い込んで採用を前倒しする動きが広がっていた。

 ▼ただ、採用活動が自由になれば、当然就活の早期化、長期化が進む。学業が手に付かない学生がますます増えそうだ。人気企業に優秀な人材が集中する、格差拡大の指摘もある。

 ▼実は戦前にも就職協定は存在していた。卒業が確定した後で、採用試験を行うとの申し合わせである。小津安二郎監督の「大学は出たけれど」で、登場人物が卒業後に就活しているのも、協定が効力を発揮していたからだ。ところが求人難になると抜け駆けする会社が続出して、協定は破棄される(『「就活」の社会史』難波功士(こうじ)著)。まさに歴史は繰り返す。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ