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火力依存8割超のリスク 危うい日本のエネルギー

 私たちの暮らしや産業に欠かせない電気。その供給をめぐる実情は、2011年の東日本大震災以降、アンバランスで危うい状況が続いています。原子力発電の比率が大きく低下した結果、火力発電に過度に依存しているのです。

 普段よりも電気を多く使う夏を迎え、この現状について考えてみました。

 火力発電の比率が高いと、何が問題なのですか?

 日本の電源構成をみると、2016年度は火力発電が約81%を占めました(図1)。震災前の10年度は約62%だったので大幅に上昇しています。この比率は、私たちの生活や経済が大混乱に陥った、オイルショック当時を上回っています。

図1 日本の電気はほとんどを火力発電に頼っている

 自国内でどれだけエネルギー源を確保できるかを示す「エネルギー自給率」も、10年の約20%から14年は約6%にまで下がってしまいました。これは、エネルギーを大量に消費する先進国の中でも極めて低い水準です(図2)。

図1 日本の電気はほとんどを火力発電に頼っている

 これらは、いったん燃料を入れると1年以上発電でき、また、使い終わった燃料を再処理することで再び燃料として使用することができることから、「準国産エネルギー」とされる原子力発電の比率が、約2%まで大幅に低下したことが一番の原因です。

 この自給率の低下は、中東で紛争などが起こった場合、火力で使用する化石燃料の輸入に支障が出たり、原油価格が高騰したりするリスクへの対応力が弱まっていることを意味します。火力比率がオイルショック時を上回っているため、より深刻な影響が出る可能性も否定できません。

 そのため、多様な発電方法をバランス良く組み合わせた「エネルギーミックス」を実現することが重要になっています。国は30年度の電源構成について、火力の比率を56%程度とする一方で、再生可能エネルギーを22~24%程度、原子力を20~22%程度とすることを目指しています(図3)。

図1 日本の電気はほとんどを火力発電に頼っている

 天候に左右される再生可能エネルギーは安定供給の面で不安があるほか、コストが高いといった問題があります。エネルギーミックスの実現には、安定的に電気を供給できる原子力が、欠かすことのできない電源であるといえます。

緊迫化する世界 危うい日本のエネルギー

専門家に聞く 作家・元外務省主任分析官 佐藤優氏

 化石燃料を使う火力発電の比率が8割を超える現状は、エネルギー安全保障の上で極めてリスクが高いと考えています。世界情勢は緊迫化しています。中東では、イスラム国(IS)によるテロのほか、イランとサウジアラビアの対立といった不安要素もあります。さらにIS勢力が中東からインドネシアやマレーシアにまで展開し、エネルギー資源を日本に運ぶ重要な海上交通路であるシーレーンが、脅かされる恐れもあります。

 現在は原油価格が比較的安定していますが、有事でいつ高騰してもおかしくありません。その結果、電気料金が大幅に上昇することもあり得ます。そうなれば、日本経済には致命的な打撃となります。

 化石燃料だけに依存するのではなく、原子力や再生可能エネルギーを組み合わせたエネルギーミックスの重要性が一段と高まっています。国益を守る観点から、日本は原子力の活用を含め、エネルギーミックスの実現を目指すべきです。

図1 日本の電気はほとんどを火力発電に頼っている

佐藤優氏

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