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【話の肖像画】旭化成フェロー・吉野彰(65)(4)ブレークスルーは材料から

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商品化されたリチウムイオン二次電池を手に
商品化されたリチウムイオン二次電池を手に

 〈昭和56年、4つ目の研究をスタートさせる。これが、充電して繰り返し使えるリチウムイオン二次電池につながった〉

 4つ目の研究テーマに選んだ素材は「ポリアセチレン」でした。これは(後にノーベル化学賞を受賞する筑波大名誉教授の)白川英樹先生が発見された電気を通すプラスチックで、当時非常に話題になっていたのです。太陽電池や超電導などさまざまな分野での応用が予想され、素材メーカーとして、この素材を使った新技術の基礎研究に着手したわけです。

 3つの研究に失敗した過去の反省を踏まえ、どんな分野に向けて開発を進めるかをとことん突き進めました。そして、コンパクトサイズの8ミリビデオカメラに使えるような小型で軽量の二次電池のニーズが高まっている一方で、電池業界ではマイナス(負)極に最適な材料が見つからないために、なかなか商品化できずにいることをつかんだのです。負極に使える新材料が出てきたら、大きなブレークスルー(打開)ができる可能性があると思いました。

 〈だが、ポリアセチレンは、負極材料に使うには欠点があることが判明。別の材料を探すなど試行錯誤を重ねた〉

 まず、ポリアセチレンと組み合わせるのに最適な正極の材料がなかなか見つかりませんでした。見つかったのは57年末に起きた偶然の出来事がきっかけです。大掃除を終え、取り寄せたまま手つかずになっていた海外の研究文献を何げなく読み始めたら、ある米教授の論文に「コバルト酸リチウム」というリチウムイオン含有金属酸化物が二次電池の正極になるとありました。これと組み合わせてみると充放電ができ、リチウムイオン二次電池の原型が完成したのです。面白いものは、ぽこっとできた空白のような時間に見つかることが意外と多いんですね。

 しかしその後、ポリアセチレンでは二次電池を軽量化することはできても小型化することはできないことに気付きます。「構造的によく似た炭素材料なら何とかなるのでは」と思い、100はくだらない数の炭素材料を取り寄せて評価しましたが、おしなべてだめでした。そんなとき、社内の別の研究所が「気相成長法炭素繊維(VGCF)」という新しい炭素繊維を研究していることを聞きつけました。早速試してみると、これがとびきりよかったんです。

 研究段階で小規模な試作設備しかなかったVGCFは量産ができず、最終的には近い性能を持つ特殊なコークスが初代の負極材料として世の中に出ていくことになりましたが、負極に炭素材料、正極にコバルト酸リチウムを使った新しい電池ができました。ブレークスルーのきっかけになるのはやっぱり材料。世の中にある素材を単純に組み合わせるだけなら誰でもできますが、そう簡単に入手できない素材はやってみないと分からないですから。(聞き手 豊田真由美)

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