記事詳細
【アベノ断(中)】
「平成9年のトラウマ」 終止符打てるか
「総理は本当に悩んでいた…」。ある政府関係者は8月下旬の安倍晋三首相の様子をこう振り返る。
来年4月から消費税率を8%に引き上げるべきか否か-。当時、首相官邸には60人の有識者が集まり、6日間におよぶ集中点検会合が開かれていた。出席者の7割超が引き上げ賛成・容認派だったが、首相はなお慎重だった。
迷いの背景にあったのは、政治が長く払拭できなかった「トラウマ」だ。
「私は平成9年から10年にかけて緊縮財政をやり、国民に迷惑をかけた。私の友人も自殺した。本当に国民に申し訳なかった。これを深くおわびしたい」
13年春、自民党総裁選に出馬した橋本龍太郎元首相は、こんな謝罪を繰り返した。首相を務めていた9年4月、消費税率を5%に引き上げるとともに、公共事業費の削減を進めた橋本氏。総裁選では「財政再建のタイミングを早まって経済低迷をもたらした」との自責の念も示した。
では、実際に橋本氏がとった経済政策が、その後、長く続いた「デフレ不況」の引き金となったのか。