【リーマン10年 危機後の世界】ウォール街の高給復活 幹部と社員の格差拡大 - 産経ニュース

【リーマン10年 危機後の世界】ウォール街の高給復活 幹部と社員の格差拡大

10日、米ニューヨーク・マンハッタンの英大手銀行「バークレイズ」。かつてはリーマン・ブラザーズの本社ビルだった(上塚真由撮影)
 【ワシントン=塩原永久】2008年のリーマン・ショックの震源地となった米ニューヨーク・ウォール街の金融業界の報酬が、「高額過ぎる」と批判を浴びた金融危機前並みの高水準を取り戻した。公的資金で救済された銀行幹部が得ていた多大な報酬は、「経済格差」への反発を招いた。景気回復で企業収益が増大する一方、経営幹部と社員平均の収入格差が拡大する傾向も加速している。
 ニューヨーク市内の証券業の平均賞与は、ニューヨーク州会計監査官室調べで、17年に前年比17%増の18万4220ドル(約2千万円)と大きく伸びた。15%増だった16年に続く2年連続の上昇で、19万ドル余りだった06年に並ぶ水準に回復した。
 好景気を受けた株高が追い風となり、主要証券業者の税引き前利益は計245億ドルと前年より約42%増えた。「証券マンの年間所得は、それ以外の業種の5倍となった」(ディナポリ州会計監査官)という。
 危機後に落ち込んだ金融幹部の報酬も盛り返した。米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、17年に主要5銀行の最高経営責任者(CEO)の報酬は平均で前年比17%増え、06年以来の最高を記録した。JPモルガン・チェースのダイモンCEOは2950万ドル(約33億円)、ゴールドマン・サックスのブランクファインCEOも2400万ドルと高額ぶりが目立つ。
 10年に成立した米金融規制改革法(ドッド・フランク法)で報酬開示の拡充などは実施されたが、金融幹部の賞与への厳しい規制案は導入されていない。
 国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は危機から10年の節目に論考を発表し「経済損失を庶民が負担し、責任を問われない銀行家への怒りが生まれた」と金融業界を批判した。
 サンフランシスコ連銀の試算では、危機の影響で、米国人が生涯所得を平均7万ドル(約770万円)失った。米シンクタンク「経済政策研究所」の調査によると、米主要350社のCEOと社員平均賃金の格差は、1989年の58対1から、2017年に312対1に拡大。危機後に初めて300倍を超す格差を記録した。
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 金融規制改革法(ドッド・フランク法) 2008年に起きたリーマン・ショックの再発を防ぐため、米国のオバマ政権が10年に成立させた法律。策定を主導した当時の議員の名前にちなみドッド・フランク法と呼ばれる。経営破綻時の影響が大きいと見なした金融機関に厳しい自己資本比率を課し、大手銀行が自己資金で投機的な取引をすることを禁じる「ボルカー・ルール」も盛り込んだ。トランプ大統領は今年5月に法律を見直し、規制や監督を大規模な金融機関に限定する法律に署名した。中小の地域金融機関の事務負担軽減などが狙い。(共同)