【経済インサイド】いまだ残る消費税率10%の「再々延期説」 先送りで憲法改正の後押し狙う? - 産経ニュース

【経済インサイド】いまだ残る消費税率10%の「再々延期説」 先送りで憲法改正の後押し狙う?

主計官を集めた会議で、「今回は間違いなく(消費税増税を)実施できる状況」と語る麻生太郎副総理兼財務相=8月27日、財務省
消費税増税の再々延期説を警戒する財務省
 平成31年度予算の各省からの概算要求が8月31日に締め切られ、年末に向けて予算編成の作業が本格的にスタートした。財務省は来年10月の消費税率10%引き上げを前提に当初予算で大型景気対策を実施する方針だが、一部シンクタンクからはいまだに増税の再々延期を疑う声が根強い。安倍晋三首相から10%引き上げを予定通り実施するとの明確な表明がないことが背景にある。
「やれる状況」
 「今回は、間違いなく(増税を)やれる状況になっている」
 麻生太郎副総理兼財務相は8月27日に財務省内で開かれた主計官会議で、現時点で日本経済が消費税率10%引き上げ可能な状態にあることを強調した。確かに、24年12月から始まった景気回復局面は戦後歴代2位の長期にわたり、来年1月には最長となる見通しだ。求職者1人当たりの求人数を示す有効求人倍率が高水準を示すなど雇用情勢も好調に推移している。
 ただ、景気の先行きをめぐっては、下振れリスクの高まりから増税の再々延期を予測するシンクタンクもある。
 野村証券が8月16日に発表した経済見通しのリポートによると、日本経済はグローバル景気が徐々に減速するのに伴い「外需主導での緩やかな成長鈍化が32年度にかけて継続する」と指摘。人口減による労働需給の逼(ひっ)迫(ぱく)が賃上げを加速させる効果も鈍いとして「実質消費の伸びは基調的に低迷する可能性が高い」とも強調した。その上で、日本銀行は大規模金融緩和の修正に入っており、景気後退局面での政策対応は「従来以上に財政に依存することになろう」と分析し、増税の再々延期を予想している。
 30年4~6月期国内総生産(GDP)速報値の発表を受けての主要シンクタンク12社の経済見通しを見ても、31年度は増税の影響が大きく、実質GDP成長率が0・7~1・0%と伸び悩む。野村証券の美和卓チーフエコノミストは「消費税増税の機運は高まっているが、消費の基調の弱さやトルコ情勢などグローバル経済の不穏な動きがこれまで延期したときと何となく重なる」と語る。
 消費税率10%引き上げは、もともと民主党政権時代に成立した社会保障・税一体改革法で27年10月に予定されていたが、26年11月に安倍首相が「成長軌道に戻っていない」などとして29年4月へ1年半の延期を表明。この際、経済状況などで再増税を停止する「景気弾力条項」は撤廃されたが、安倍首相は28年6月、「これまでの約束とは異なる新しい判断だ」と説明し、31年10月へ2年半の再延期を発表した。
首相は明言せず
 安倍首相が増税可否を判断した時期を振り返ると、26年4月の消費税率8%引き上げ時は25年10月に引き上げを閣議決定しており、増税が予定される前年の夏~秋ということになる。来年10月の10%引き上げの可否も、そろそろ首相の口から発表されてもおかしくない時期に差し掛かっている。
 首相周辺は「10%引き上げによる財源を幼児教育無償化などに使うことが決まっており、基本的に再々延期はあり得ない」と断りつつ、「憲法改正の国民投票を成功させるため、自民党内に増税の先送りを後押しに利用すべきだと主張する人はいる」と明かす。10%引き上げに伴う駆け込み需要・反動減を抑えるための大型景気対策を実施しても世論の不興は避けられない。憲法改正の国民投票で過半数の賛成票を集めるためには増税の再々延期しかないというのだ。
 9月の自民党総裁選で安倍首相の対抗馬である石破茂元幹事長は、「今度の(増税)先送りはあってはいけない」と述べ、予定通りの実施を主張している。憲法改正の行方にも大きく影響することが予想される消費税増税。首相の決断が注目される。(経済本部 桑原雄尚)
 消費税 原則として全てのモノやサービスの価格に上乗せして課される間接税。法人税などに比べ税収が景気に左右されにくく安定している。平成元年4月に税率3%で導入され、9年4月に5%となった。当時の民主、自民、公明の3党合意で24年8月に成立した社会保障・税一体改革法により26年4月から8%に上がった。その後、10%への引き上げ時期は2度にわたり延期されている。