早期解決、全面対決、長期化…「3つのシナリオ」可能性を探る

米中貿易戦争
米中をめぐる今後の主な予定

 トランプ米大統領が、対中制裁を大幅に強化する準備があると7日に示唆したことで、米中の貿易摩擦が一段と激化することが見込まれる。米中ともに一歩も引かない構えを崩しておらず、収束の気配がなかなか見えないが、今後、米中貿易戦争がどのように推移するのか「3つのシナリオ」に絞って可能性を探る。(三塚聖平)

 (1)早期解決

 中国は輸入総額で米側に大きく劣り、米国のように制裁対象を広げるのが難しくなってきている。さらに、米国との対立激化により、中国経済の先行きには不透明感が増している。東京財団政策研究所の柯隆(かりゅう)主席研究員は「表に出ない形でトランプ政権に譲歩し、和解したいというのが中国側の本音だ」とみる。

 米側も11月の中間選挙が終われば、中国に融和的な態度を取りやすくなるとの見方がある。11月には20カ国・地域(G20)首脳会議が開催予定で、これに合わせて米中首脳会談を開いて「終戦」を演出するとのシナリオが指摘される。

 だが、中国側は米製品の輸入拡大など経済面では折り合えても、ハイテク産業育成政策「中国製造2025」の撤回など習近平指導部の威信に関わる点での妥協は難しい。8月下旬にワシントンで開かれた事務レベル協議にも大きな進展がなく、早期解決の可能性は遠のいているとの見方が強まっている。

 (2)全面対決

 最も懸念されるのは、米中の対立が歯止めのきかないレベルにまで過熱化するシナリオだ。

 中国側がさらなる報復措置として、米企業への投資規制や不買運動など関税以外の“実力行使”に出る可能性を米メディアは報じる。米国債の大量売却という「最終手段」も指摘されるが、中国側が過激な手段に踏み切れば、トランプ政権がより強く反発し、報復合戦が際限なくエスカレートし続ける恐れが強い。

 一部では貿易戦争が実際の戦争に発展するリスクも指摘されるが、東京大大学院の飯田敬輔教授(国際政治経済論)は「経済の摩擦が激化して軍事レベルにまで達するケースは歴史的に皆無ではないが、米中は核保有国であるためその可能性は低い」と分析する。

 (3)長期化

 最後は、長期間、対立状態が続くというものだ。8月下旬の事務レベル協議が不発に終わり、このシナリオを指摘する声が増した。

 香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)は8月末、「今や中国は長期にわたる戦いを準備している。新たな冷戦や実際の戦争という最悪のシナリオもだ」とする北京大国際政治経済研究センター長の王勇氏の見方を紹介した。長期化を予想する背景には、米中の対立が一過性のものではなく、中国の台頭を封じる米側の中長期的な戦略に基づくためだとする見方がある。

 だが、不安定な状況下で突然の景気悪化や、通貨相場の乱調といった緊急事態が生じれば、緊張状態が一気に増す恐れもある。