新たな“自殺ゲーム”世界中でじわり拡散 ネットユーザーを脅迫・洗脳、「モモチャレンジ」要警戒

 
インド東部オディシャ州で、地元警察が開催した自殺ゲーム「モモチャレンジ」に注意を呼びかける授業(警察の公式ツイッターより)

 インターネット上で「モモチャレンジ」と呼ばれる“自殺ゲーム”が流行しつつある。匿名の“犯人”から送られてくる「チャレンジ」をこなしていくうち、内容がエスカレートしていき、最終的に自殺に至ってしまうというものだ。既にモモチャレンジとの関連が疑われる自殺が世界各国で確認されている。インド国内でも相次いで若者が命を絶ち、政府が注意を呼びかける事態に発展した。(ニューデリー 森浩)

ある日突然送られてくるメッセージ…ネットを通じた「洗脳」

 インターネットで自殺を促すゲームといえば、昨年流行した「ブルーホエール」(青い鯨)が有名だ。

 何者かがSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて利用者に指示を出し、体に刃物でクジラの絵を刻んだりする「課題」を与える。指示は次第にエスカレートし、最終的には自殺を促されるという。ロシア発とされ、2013年以降、同国内だけで130人以上が自殺したとされる。

 今回、流行が確認されているモモチャレンジも、この青い鯨に酷似する。多くはスマートフォンの通信アプリなどSNSを通じて、匿名の“犯人”からメッセージが送られるところから始まる。共通しているのは、女性が目をむいたような不気味な人形のアイコンだ。

 犯人は、自傷行為などさまざまな「チャレンジ」を要求し、利用者を追い込んでいく。そのうち、だんだんと要求は過激化していき、最終的に自殺にまで追い込まれてしまう。

 要求を拒否すれば、犯人はユーザーの個人情報を持ち出し、「妹の身に危険が及ぶぞ」などと脅迫し、周囲に相談できない状況となる。それらの個人情報の多くはユーザー自身がソーシャルメディア上でアップしたものだという。

 「実態としてはインターネットを通じた洗脳作業と自殺への誘導だ」と話すのは、ITジャーナリストの三上洋氏だ。三上氏は「青い鯨もそうだが、要求をこなしていくうち、ある種の洗脳状態のような状況となる。その様子は周囲からはほぼ見えない。そして、誰にも相談しないまま、突然自殺してしまうことになる」と分析している。

世界各地で死者 “犯人”の逮捕も

 モモチャレンジの流行は8月初旬から始まり、世界に拡散したようだ。

 アルゼンチンでは8月上旬、首都ブエノスアイレスで12歳の少女が自殺したが、モモチャレンジに参加していたとみられる。コロンビアでも自殺者が出たとの報告がある。

 インドでは東部オディシャ州で、8月22日と9月5日に若い男性が相次いで自殺。警察は自殺に至る理由が特に見当たらないことから、ともにモモチャレンジによるものとみている。

 インドでは昨年、青い鯨による自殺者も相次いだ。今回の事態を重く見たインド電気・情報技術省は「親たちは子供の様子を確認し、変化の予兆を見逃さないようにしてほしい」とする通知を発表した。

 捜査当局も動き出しており、印英字紙ヒンドゥスタン・タイムズによると、インド東部・西ベンガル州では、不特定多数のユーザーをモモチャレンジに招待したとして、私立大学生が逮捕された。取り調べに「いたずらのつもりだった」など供述したという。

 ただ、この大学生が世界中での事件の首謀者というわけではなく、あくまで流行に“乗った”だけだ。犯人は同時多発的に発生しているもようだ。

課題のネットリテラシー向上…インド政府は

 インド政府がモモチャレンジの啓発や対策に躍起になっているのは、インターネットを適切に使いこなす知識や能力である「ネットリテラシー」の低さが問題となっているためだ。

 代表例の一つが、ネットでの情報を安易に信じた結果、無実の人に対してリンチに至るケースだ。

 北東部アッサム州では6月上旬、「子供を誘拐した男がいる」という情報が通信アプリ「ワッツアップ」を通じて拡散。たまたま道を尋ねた男性2人が誘拐犯と誤認され、暴行を受けて死亡した。インド国内で6月以降だけで同種の事件で少なくとも30人以上が殺害された。

 インド政府は、国内で2億人以上が利用しているワッツアップが情報拡散のツールとなっていることから、運営業者に不適切な情報を削除するよう求めているが、それでもフェイクニュースを信じ込む人は絶えない。

 国内の専門家からは「あやふやな情報は信じないよう啓蒙(けいもう)していかなくてはならない」との声が上がるが、インターネットに氾濫する情報にどう接するかは世界的な課題でもあるだけに、即効性のある対策は難しそうだ。