神鋼改革いばらの道 統制力不足、収益偏重…根深く

モノづくり激震~信頼回復の壁~(上)
記者会見で頭を下げる神戸製鋼所の川崎博也会長兼社長(手前)=6日午後、東京都中央区(松本健吾撮影)

 製品データ改竄問題の責任をとって6日に川崎博也会長兼社長が辞任すると発表した神戸製鋼所。川崎氏は平成25年4月の社長就任以来、低迷する業績の回復を急ぐ一方、グループの一体化やガバナンス(企業統治)の強化に腐心してきた。しかし、成長路線への復帰がかなわないばかりか不祥事の連鎖も断ち切れず、改革は道半ばで終わった。

 「一日も早く神戸製鋼が生まれ変わったと思われるには、新たな体制でスピード感を持って変革を進めることが最善の道と考えた」

 6日の記者会見の冒頭、川崎氏は苦渋の表情を浮かべながら辞任を表明した。

 川崎氏は、外部調査委員会の調査結果が出た後で進退を決めるとしていた。辞任は1週間前に最終調査報告書の骨子を聞かされてから考え始め、5日の取締役会で正式に決めたという。

 川崎氏は、社長就任時に2期連続で最終赤字を計上していた業績の改善に尽力。就任2年目の27年3月期には早くも黒字転換を果たした。将来の国内市場縮小を見据え、阪神・淡路大震災からの復興の象徴だった神戸製鉄所(神戸市灘区)の高炉休止に踏み切るなど、中長期的視点に立った経営も進めた。

 一方、事業部門同士の連携がなく、情報共有も不完全な「縦割り」組織の弊害を痛感。28年4月に会長を兼ね、自身に権限を集中させて組織の壁を取り払いながら、この年にグループ会社で発覚した不正を受けて現場との対話を増やした。そうした姿勢を評価する社員は多く、「不正に関与したわけでなく、やっていることは間違っていなかった。辞任は残念だ」と同情する声も聞かれる。

 ただ、大規模な不正を見抜けなかった上、過去に発覚した不正を対症療法で済ませてきた点で、経営陣の責任は重い。

 昨年10月に不正を公表した際、川崎氏は自ら記者会見に姿を現さず、経済産業省の怒りを買った。鉄鋼製品の不正は「ない」と言い切った直後に公表したことも、批判を浴びた。

 一度は浮上した業績は、28年3月期から2年連続で赤字に転落。今期は黒字に転換する見通しとはいえ、成長軌道にはほど遠いのが現状だ。不正の対応に追われたこの半年は、投資などの重要な経営判断もできていない。

 東京本社と神戸本社の社長室には、カエルの置物が置かれている。会社を変える(カエル)との決意を忘れないためだが、結局は実らなかった。

 外部調査委の調査によると、不正の原因はコンプライアンス(法令順守)意識の欠如や本社による統制力の低下、収益偏重の経営など多岐にわたり、川崎氏も「この会社は根深い問題を抱えている」と認める。改革を引き継ぐ後任は、近日中に開く取締役会で決める方針で、会見に同席した経営企画担当の水口誠専務執行役員らが候補に挙がる。

 しかし、誰がトップに就いても、会社を根本から生まれ変わらせ、失った信頼を取り戻す強力な指導力が不可欠だ。行く手には、いばらの道が待ち受ける。

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 神戸製鋼に端を発した素材メーカーの品質問題。国内製造業に構造的な要因があったのか検証する。