榊原経団連会長の出身企業 社長在任時の不正 公表前日に神鋼や三菱マテ非難も 

東レのデータ改竄
経団連の榊原定征会長=9月25日、東京都千代田区

 東レ子会社のデータ改竄の発覚は日本の製造業にとって極めて深刻な事態だ。東レは経団連の榊原定征会長を出している名門の繊維大手で、今回の不正は榊原氏の同社社長、会長在任中に起きていた。経団連会長の出身企業での大きな不祥事は、平成14年に現在の経団連の体制となってから初めてで、モノづくりの信頼を損ねた責任は重い。

 榊原氏はこれまで、神戸製鋼所や三菱マテリアルのデータ改竄問題を強く非難してきた。27日の定例記者会見でも「日本の製造業に対する信頼が揺らぎかねない深刻な事態」と指摘。不正があった場合に「発覚時点で公表するのが原則だ」と、各社の情報開示のあり方も批判してきた。

 だが、翌28日午前には、東レが不正の把握から約1年3カ月も経過してデータ改竄を発表。他社への批判を繰り返してきた榊原氏にとっては、自らの出身母体に足元をすくわれる形となった。

 東レが今回のデータ改竄を榊原氏に告げたのは27日の定例会見後。関係者によると、経団連本部で東レ担当者から報告を受けた榊原氏は「残念だが、真摯に対応するように」と応じるのが精一杯だったという。

 榊原氏は現在、東レでは取締役を降りて相談役となっており、同社の経営にはほとんど関与していない。榊原氏への報告が遅れたのは、東レの日覚昭広社長ら現経営陣と榊原氏との関係が「ぎくしゃくしている」(業界関係者)ことが影響している可能性もある。

 経団連会長を、出身企業は数十人のスタッフを出して支えるのが通例だが、経団連関係者も「歴代会長に比べ、東レのスタッフは極めて少ない」と明かす。また、榊原氏が東レの取締役を退任して以降、日覚氏らとの意思疎通が乏しい状況になっているという。

 榊原氏の経団連会長の任期は来年5月だが、経済同友会の小林喜光代表幹事は28日の記者会見で「日本の製造業の信頼が音を立てて崩れていく」と今回の不正を重大視。榊原氏が今後、自らの責任にどう言及するかも焦点になりそうだ。(平尾孝)