【主張】安保法制の合意 「仲間守る国」への前進だ 実効性ある条文作りめざせ
日本の平和を守り、国民の安全を高める措置が包括的に盛り込まれた。与党が、新しい安全保障法制整備の基本方針で合意した。
積極的平和主義を柱とした新たな安全保障の枠組みが固まってきたことを評価したい。
周辺国の力による現状変更の動きに日米同盟の充実で対峙(たいじ)することに加え、これまで手がけられなかった国際社会との連携が強化される。これによって窮地に立った友軍や文民を助け出すなどの当たり前のことが実行できる。
受け身で他者依存だった戦後日本が変わる好機でもある。
政府・与党は条文化の作業を進め、5月中旬に関連法案を国会へ提出するが、実効性を確保することを優先してほしい。
≪制服組から意見聴取を≫
これまでは「歯止め」の名の下に自衛隊の行動をがんじがらめに縛るような論議が散見した。自衛隊員の任務遂行と安全確保を追求した法制を整えなければなるまい。当事者である自衛隊の制服組から軍事専門家としての意見を繰り返し聞くことが欠かせない。
法案が成立すれば、自衛隊の平和を守る活動と役割が多くの分野で格段に広がる。
武力行使を伴わない分野では、海外における後方支援や人道復興支援、国連平和維持活動(PKO)のあり方を充実させ、日本は国際平和に一層貢献する手段を持つことになる。
具体的には、「国際社会の平和と安全」に従事する他国軍への後方支援のため、自衛隊の海外派遣の恒久法を新たに制定する。これまでは特別措置法の制定が求められたが、必要に応じて随時、派遣でき、タイミングを逸するおそれがなくなる。
テロ対策の一環として、海上自衛隊はインド洋の給油活動を行ったが、民主党政権下で取りやめた。中国海軍は現在、海賊対処行動を取っている。日本も海自を派遣しているが、それをせずに中国海軍だけが活動していれば、世界の評価はどうなるだろうか。
PKOでは、国連基準を採用し、任務遂行のための武器使用を行えるようにする。友軍や文民の危難を救う「駆け付け警護」も解禁する。国際社会から「仲間を守る国」「助けるに値する国」とみなされなくては日本の平和と安全は保てない。
一方、「日本の平和と安全」に重要な影響を与える事態に対応するために、周辺事態法を改正し、米軍以外の友軍の支援にも道を開く。後方支援として、医療、輸送や捜索救助などを行えるようにする。治安維持業務も認める。
弾薬の輸送・補給も可能にする。南スーダンPKOで陸自部隊が、弾薬不足に陥った韓国軍のために国連へ弾薬を供与した例を思い起こせば必要な措置である。
≪自衛権の行使を幅広く≫
最大の柱となる集団的自衛権の限定行使の容認は、日米同盟強化にとどまらず、オーストラリアなどとの安保協力も深化できる。日本一国や日米同盟だけでは防衛を全うできず、関係国との共同行動が必要な国際環境を踏まえれば抑止力を高める対応である。
集団的自衛権をめぐっては、中東・ホルムズ海峡を封鎖した機雷を停戦前でも除去することに公明党が慎重である。しかし、日本の死命を制するオイルルートを守るには欠かせない対応だと認識し、合意への道を探ってほしい。
有事には至らないグレーゾーン事態では、警戒監視や共同訓練など「日本防衛に資する活動」をしている米軍や他国軍を、自衛隊が守れるようにする。尖閣諸島の守りや弾道ミサイルの早期警戒に効果がある。
ただ、グレーゾーン事態では自衛隊に、相手に危害を加える武器使用を制限する警察や海上保安庁並みの権限しか与えないままだ。これでは不十分との指摘がある。自衛権をいかに活用するかの議論も進めてほしい。
自衛隊員は国民を守り、国際平和に寄与するため、時に生命をかけてまで行動する。リスクとコストがあることを、国民が知っておくことは重要である。
安保法制は改革しなければならない課題が多いため複雑になり、国民は分かりにくいと感じている。安倍晋三首相をはじめとする政府・与党は、国会の予算審議や統一地方選の論戦と並行して、安保法制整備の意義を丁寧かつ具体的に説明してほしい。
