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【思ふことあり】スポーツジャーナリスト・増田明美 それぞれの引き際

陸上の日本選手権1万メートルの女子で、ゴール後、スタンドからの拍手に感極まった表情をみせる福士加代子=5月3日、静岡スタジアム(桐山弘太撮影)
陸上の日本選手権1万メートルの女子で、ゴール後、スタンドからの拍手に感極まった表情をみせる福士加代子=5月3日、静岡スタジアム(桐山弘太撮影)

 田村正和さんがご逝去された。古畑任三郎シリーズをはじめテレビドラマの主演スターとしても活躍された方。特に私は古畑役の田村さんが大好きで、あの独特の語り口にお顔のカッコよさ、スタイルも良くて「スターってこういう人なんだ!」と思いながら、古畑が犯人を明かすまでの長いセリフを楽しんでいた。心からご冥福をお祈りいたします。

 そして、その後の追悼番組で、2018年に眠狂四郎を演じた田村さん(当時74歳)が試写会を見てショックを受け、オンエアを見たくないと言っていたことを知った。「あんな顔じゃだめですよ」みたいなことを言っていた。それから田村さんをテレビで見なくなったのだ。田村さんは自分で引き際を決めたのだと思う。どの世界でも頂点に立った人ほど、自分の引き際について迷い考え、その時を決めるのは難しいのではないだろうか。

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 5月3日、日本陸上競技選手権の女子1万メートルに福士加代子さんが出場した。これまで福士さんはこの大会で7回チャンピオンになっている。五輪にはアテネから四大会連続で出場。リオデジャネイロはマラソンで出場した。今回は5度目の五輪出場をかけた挑戦だった。ところが、広中璃梨佳(りりか)さんや安藤友香さんがトップ争いをするなか、福士さんは2周抜かれて最下位でフィニッシュ。競技場で見ていた私は悲しかった。「女王」福士さんのまさに、「盛者必衰の理(ことわり)をあらわす」風景だったのだ。

 レース後、「こんなに走れないとはね…。応援してくれたのに、ごめんなさいね」と明るく福士さんが話しかけてくれたので、「なんで走ったの?」と聞いてみた。足の状態が良くないことを知っていたからだ。すると、「だって挑戦するチャンスがあったでしょ。しないのはもったいないもん」と福士さん。

 いろいろ話していたら、練習の過程でも疲労はとれにくくなっているようだ。「以前は自分でムチを入れたら走れていたけど、最近はムチの跡だけ残って走れない」と笑って言った。何と返していいかわからなかったけど、彼女の目に浮かぶ涙をみながら、カッコいい人だなと心から思った。

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