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【直球&曲球】野口健 選手に「五輪辞退」求めるSNSに怒り

ツイッターのロゴ(松本健吾撮影)
ツイッターのロゴ(松本健吾撮影)

 新型コロナウイルスはついにエベレストにまで到達し、感染した登山隊員やシェルパもカトマンズの病院にヘリで救急搬送。インドでの感染爆発が隣国ネパールにも飛び火し、日々入ってくる情報はまさに悲鳴だ。僕の知っているシェルパもコロナの犠牲になった。

 ヒマラヤ遠征に向け、この1年間、国内でトレーニングを続けてきたが、先行きが全く見えず、何度も気持ちが折れそうになった。先に目標を定め、そこに向けて、逆算しながら準備を進めていく…。コロナはそのいつものパターンを奪った。故にモチベーションの維持は極めて難しい。

 東京五輪に参加する予定のアスリートたちにのし掛かるストレスや不安は計り知れないだろう。そのような中、闘病生活を経て奇跡的な復活を果たした競泳女子の池江璃花子(りかこ)選手に世界中が感動した。決して諦めない姿勢に勇気づけられた人も多いだろう。しかし、あろうことか、その池江選手に対し五輪出場の辞退を求めるコメントがSNS上で複数寄せられたのである。げすの極みである。

 確かにコロナ禍の中での五輪開催に不安を覚える人も多いだろう。僕もその一人だ。しかし、五輪開催の有無についてその矛先をアスリートに向けてどうする。五輪開催の決定権を有しているのはIOC(国際オリンピック委員会)である。五輪開催に意見があるのならばIOCに言うべきだ。または開催都市や国に、であろう。

 この1年半、日本社会は多くの課題を露呈しつつもコロナとそれなりに向き合ってきた。諸外国のようなロックダウンという手段を使わずとも感染者数はケタ違いに少なく押さえ込んできた。また最終的には自分たちの判断で活動を制限してきた。大きなデモや暴動が起きることもなく自制してきた。日本人の理性と協調性によって、ここまで踏ん張ってきたのだ。

 それだけにSNS上ではびこる心ない言葉は残念だ。コロナ禍による閉塞(へいそく)感の表れかもしれないが、言葉は時に魔物。負の連鎖が蔓延(まんえん)すれば社会がむしばまれていく。そのことを肝に銘じなければならない。

【プロフィル】野口健

 のぐち・けん アルピニスト。1973年、米ボストン生まれ。亜細亜大卒。25歳で7大陸最高峰最年少登頂の世界記録を達成(当時)。エベレスト・富士山の清掃登山、地球温暖化問題など、幅広いジャンルで活躍。新刊は『登り続ける、ということ。』(学研プラス)。

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