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【新聞に喝!】中国の民族・人権問題に声あげぬ新聞 元東京大学史料編纂所教授・酒井信彦

中国の国旗
中国の国旗

 4月12日、国会内で「インド太平洋人権問題連絡協議会」による記者会見が行われた。この長い名称の連絡協議会は、3月30日に設立されたもので、これまで個別に活動していた、中国のいわゆる「少数民族」出身の在日の人々らによる13団体が、日本でも中国での人権侵害に対する抗議を、国会議員にも行ってもらおうと、団結して結成したものである。

 記者会見には、在日チベット人コミュニティーの小原カルデン代表、日本ウイグル協会の于田(うだ)ケリム会長、そして香港民主活動家のウィリアム・リー氏が、それぞれ会見して、さらに日本に帰化した内モンゴル出身の学者として知られる、世界モンゴル人連盟理事長の楊海英氏がメッセージを寄せた。つまりこの連絡協議会には、非漢民族だけでなく、香港人も参加しているわけである。これらの人々が求めているのは、まず国会で非難決議を行うことであり、さらにジェノサイド認定を行うことによって、日本でも明確に抗議の意思を表明してもらいたいのだという。

 この連絡協議会の名称に、「インド太平洋」が付せられていることから分かるように、インド太平洋に関係する、最近行われた一連の会談に連動させたものである。特に最重要といえる、菅義偉(すが・よしひで)首相・バイデン米大統領による日米首脳会談においても、中国の人権問題に言及されたのであるから、この記者会見は、まことに時宜にかなったものであった。

 しかし、13日付の紙面で大きく取り上げたのは、2面に写真入りで紹介した産経新聞のみであって、他の主要5紙は、私は注意深くさがしたつもりだが、まったく報道していなかった。これだけ重要なニュースを、完全に黙殺したわけである。これはいったいどうしたことなのか。中国の最大の弱点、すなわちアキレス腱(けん)である、民族問題・人権問題に直接関係することであるから、故意に筆を抑えたのであろうか。それほど中国が怖いのか。

 かつて中国の文化大革命時代、朝日新聞は広岡知男(ともお)社長の「歴史の目撃者論」によって、知っていることでもあえて書かず、それによって唯一追放を免れた。その時に追放された他紙も次々と復帰したが、産経新聞だけは、31年間粘り強く頑張った。産経新聞が、誇りにしてよい勲章である。中国にとって好ましくないことは、筆を控えるという、忖度(そんたく)の中でも最悪の忖度が、いまだに新聞界では生きているのだろう。

【プロフィル】酒井信彦

 さかい・のぶひこ 昭和18年、川崎市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学史料編纂(へんさん)所で『大日本史料』の編纂に従事。

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