【主張】「赤木ファイル」 財務省は最大限の開示を
求められたファイルの存在確認に、1年以上を要した。あまりに不自然であり、意図的な隠蔽(いんぺい)や遅延を疑われても仕方あるまい。
森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書改竄(かいざん)問題は終わっていない。「いつまで森友か」といった批判は当たらない。いたずらに問題を引きずり、長引かせているのは財務省であり、政府である。
その反省を基に、裁判に提出されるファイルの中身は最大限の開示に踏み切るべきだ。黒塗りだらけの文書が提出されれば、政府の信用は地に落ちる。
財務省近畿財務局の元職員、赤木俊夫さんが決裁文書の改竄を強いられて自殺に追い込まれたとして、赤木さんの妻が国に損害賠償を求めた訴訟で、妻側は赤木さんが改竄の経緯をまとめた「赤木ファイル」の提出を求めていた。
国側は当初、「存否を答える必要はない」とし、その後は「探索中」としていた。大阪地裁が今月6日までに存否を回答するよう求め、ようやく存在を認めた。
6月23日の口頭弁論に提出される予定だが、国側は意見書で「訴訟とは直接関係が認められない第三者の個人情報も含まれる」などとしてマスキングを施した上で提出するとした。マスキングとはつまり、黒塗りである。
意見書は「マスキングの範囲はできる限り狭いものとする」としたが、そもそも範囲の取捨選択を被告側に任せるのは妥当なのか。裁判所の訴訟指揮も問われる。
妻は「一切のマスキングをなしにして、夫が残したものは全部出してほしい」と求めている。
財務省を信じよ、というのは難しい。大量に改竄された文書自体が、財務省理財局長だった佐川宣寿氏が国会で「記録は廃棄した」と述べたものだった。
決裁文書改竄をめぐっては、財務省が平成30年6月に公表した調査報告書で、佐川氏が方向性を決め、近畿財務局などが関与したと説明していた。
だが報告書には、佐川氏の言葉も赤木さんの痛ましい死についても記載はなかった。佐川氏は国会の証人喚問でも「訴追の恐れ」を連発して証言のほとんどを拒み、大阪地検による不起訴が決まった後も口をつぐんだままだ。説明は尽くされていない。幕引きを遠ざけているのは、財務省自らであると知るべきだろう。