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【朝晴れエッセー】年間賞に鈴木真衣子さん(41)の「4本目のリコーダー」

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 朝晴れエッセー月間賞受賞作12本から選ぶ令和2年度の年間賞は、静岡県藤枝市の鈴木真衣子さん(41)の「4本目のリコーダー」(7月6日掲載)に決まった。選考委員の作家、玉岡かおるさん、門井慶喜さん、山田智章・産経新聞大阪文化部長が選定。それぞれ選考委員賞も選んだ。現在も続く新型コロナウイルス禍。受賞作は、休校期間が明けて子供たちが学校に戻り、母の寂しさを「休校ロス」という言葉で表現。当時、休校に困惑の声が多かった中、筆者の視点に共感が集まった。昨年からコロナ関連作品は多数寄せられたが、その中でも選考委員全員一致の“推し”の1本となった。

≪年間賞≫4本目のリコーダー 鈴木真衣子さん(41) 静岡県藤枝市

 わが家には、リコーダーが4本ある。3本は3人の息子のもの、残る1本は私のもの。休校期間中、ついに自分のリコーダーを購入した。

 自粛期間中、あれこれネット通販を利用したが、とりわけいい買い物だったと思えるのがリコーダーだ。名入れせず1千円ちょっと。“ポチ”から2日後には届いた。

 きっかけは子供たちが吹く笛の音が、ピーピーやかましく聞こえたことだった。ある日ふと、「自分が吹かないから耳障りに感じるのでは」と気付いた。かといって、息子の笛を吹くのには抵抗があったし、何より息子に拒まれたので購入した。

 細く、甲高い音色。穴を押さえる感触が懐かしかった。気付けば息子たちも子雀のおしゃべりのごとく吹き始める。夫は隣でしかめっ面。私はちっとも耳障りではない。子供たちの仲間入りだ。

 休校中、小学校からリコーダーの課題が出ていた息子たち。横に並んで吹き方を教えたり、ハモったりできたのも、4本目のリコーダーがあったからこそだ。

 そして休校明け。それぞれのリコーダーは学校へと旅立ち、名無しの1本が残った。1人で家で吹いてみた。聴いているのは水槽の魚だけ。リコーダーの独奏は、さみしさを演出するにはもってこいだな、と1人静かに笑った。

 子供の目線に立つと、見えてくる世界、聞こえてくる世界が変わる。当たり前のことだけど、多忙な日々の中で忘れがちなことに気付かせてくれたおうち時間。まさか親が休校ロスになるとは。リコーダーの四重奏は、愛しい時間だった。

たくましい子供たちに感謝 受賞の鈴木さん

 休校が明け、さみしさと不安と安堵(あんど)が入り交じる中でつづった文章でした。子供たちと過ごしたいとおしい時間。ささやかな思い出をしたため、近所のポストに投函(とうかん)しました。まさか全国へ届き、年間賞にまで選んでいただけるとは。感謝の気持ちでいっぱいです。

 あれから1年近くがたち、子供たちはというと、withコロナの日常を驚くほど柔軟に受け入れて暮らしています。マスク型に日焼けした顔、マスクを着けていることを忘れそうなくらいはしゃぐ放課後。子供たちはたくましいです。

 7月の月間賞に選ばれたとき、コロナ禍でなかなか会えない両親や親戚、恩師たちから「おめでとう」「感動した」と連絡をもらいました。私の日常を明るく照らすきっかけをくれた子供たちに、改めて感謝したいです。ありがとう。

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