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【朝晴れエッセー】淋しくて・5月2日

 人の一生って何だろう。突然の出来事で何がなんだかわからない。60年間一緒にいた妻が突然亡くなった。とても淋しく涙が止まらない。

 楽しいこともたくさんあった。いつでもどこへ行くのも一緒だった。予期せぬ世情のあおりを受け、妻は天空へ逝ってしまった。人ってそんなに簡単に逝けるものだろうか。

 入院して一度も会うことはかなわなかった。妻との最後はリモートを介しての限られた10分間だった。

 看護師さんがつないでくれたタブレットで、私は恥じらいもなく妻の名前を叫び、照れ屋の私が妻を名前で呼んだのは、それが最初で最後だった。

 一度でいいから、手を握ってやりたかった。思い切り両手で力の限り抱きしめてやりたかった。つかまえることができたならつかまえてやりたかった。妻はもっとつらかっただろう、不安だっただろう。

 妻と長年過ごした2階の寝室へ、今でも階段を上がってくる音がするように思う。そして、そのあたりを歩いている姿が目に浮かぶ。「おーい、帰ったか」と言ってやりたいが、姿は見えない。

 無言のまま遺骨となった妻は1カ月ぶりに自宅に戻った。子供たちや孫、ひ孫と手を合わせた。

 でも、私の人生はこれからどうなるのだろう。今は皆によくしてもらっているが、心が痛みよく眠れない。元気を出して生きる力があるのだろうか。みんなに迷惑をかけないだろうか。このまま心が沈んでいくのではないだろうかと不安でたまらない。

 だからまだ、「さようなら」は言いたくない。

永井和夫 86 大阪府摂津市

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