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【風を読む】首相は国民にも台湾政策を語れ 論説副委員長・榊原智

米国訪問を終え、帰国した菅義偉首相=18日午後、羽田空港(松井英幸撮影)
米国訪問を終え、帰国した菅義偉首相=18日午後、羽田空港(松井英幸撮影)

 菅義偉首相の先の訪米は、高く評価されるに値するが、帰国後の首相の説明には問題点がある。

 首脳会談を受けた共同声明は「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」とした。共同声明に「台湾」が盛り込まれたのは実に52年ぶりで、「自由で開かれたインド太平洋」構想に代表される安倍晋三前首相の外交安全保障路線を一歩前へ進める意義がある。

 菅首相が、米有力シンクタンクの会合でのオンライン講演で「私は主権に関する事項、民主主義、人権、法の支配などの普遍的価値について譲歩する考えはない」と述べたことも、中国を抑止し、平和に資する極めて妥当な表明だった。

 尖閣諸島(沖縄県)など領土・領海・領空を守ることは主権を保持することだ。中国流でいえば、菅首相は、尖閣防衛や普遍的価値は「核心的利益」だと宣言したわけだ。

 台湾は自由と民主主義、法の支配、基本的人権の尊重などの普遍的価値を日米と共有する。地政学上の要衝でもある。「台湾海峡の平和と安定」は日米にとって譲れない核心的利益ということだ。

 菅首相は今後、訪米時の約束を実行していかねばならない。

 例えば共同声明で「日本は同盟及び地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意した」と約束したこともそうだ。日本の領域防衛にとどまらず、同盟国米国や地域の平和、安全に資するよう自衛隊をさまざまな形で活用するため、増強したり、役割分担を広げたりしていくことになる。

 狭い意味での「専守防衛」に固執する「一国平和主義」は、現代日本に戦乱や危機を呼び込む反平和主義の一種だ。それよりも日本は、味方の国・地域と協力して抑止力を高める現実的な平和主義をとるべきだ。中国との軍事バランスを日米台側に有利にしていく努力が欠かせない。

 民主主義国では重要な政策遂行に国民の理解や支持がほしい。だが、帰国後の菅首相の言動は十分ではない。国会への訪米報告では、首脳会談で台湾を取り上げた理由や、どのような台湾政策、防衛力強化を図るか説明がほぼなく、政府の立場は今まで通りといわんばかりだった。沖縄の隣の台湾本島有事は日本有事に移行する恐れが大きいと国民に説明することから始めたらどうか。

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