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【新聞に喝!】「日本が一番」に喜ぶメディア インド太平洋問題研究所理事長・簑原俊洋

会談後、共同記者会見に向かう菅首相(左)とバイデン米大統領=4月16日、ワシントンのホワイトハウス(共同)
会談後、共同記者会見に向かう菅首相(左)とバイデン米大統領=4月16日、ワシントンのホワイトハウス(共同)

 バイデン米大統領が初めて対面で行った首脳会談の相手が菅義偉(すが・よしひで)首相となった。米国側が先に訪日するわけでもない-今まで一度もない-のに、多くの日本メディアはこの事実をもって大はしゃぎをした。何事も一番というのは気持ちがいいことかもしれないが、順番よりもはるかに大事なのは会談の中身と成果である。知人の元米政府関係者いわく、日本人は特に順番にこだわるゆえに、賢明な対日対策というのは会談の内容はさておき、日本の首脳となるべく早い段階で会ってあげることであり、それだけで満足してくれるから実に楽だという。

 実際、他国のメディアが米大統領と会う順番をここまで大きく取り上げるというのをあまり聞かない。国家の自主性を考えれば、順番だけで喜ぶのは国家的メンツのみならず威信をも毀損(きそん)してしまうからだ。換言すれば、みっともないのである。

 今回、バイデン氏が菅氏と最初に会ったのは日本を自陣に引き込んで中国と対峙(たいじ)させるためである。米国が目指しているのは強固な対中スクラムの結成だが、アジアで組める相手は日本以外にいないのが現実だ。先日、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国のある大物外交官が私にこう言い放った。「米国は自らの政治システムと民主主義が最も優れているという優越感に浸り、傲慢に自らの価値観を押し付けてくるから真のパートナーにはなれない。実際、米中が衝突した場合でも、明白な立場を取らないことが自国の国益と合致する」

 だが、日本は違う。だからこそ米国はもろ手を挙げて日本の首相を迎えたのである。とはいえ、日米の思惑は完全に一致しているわけではなく、日米共同声明の発表が遅れたことからもそれはうかがえよう。声明も、3月の日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)での内容から大幅に踏み込むものではなく、「台湾海峡の平和と安定」とぼかして〈台湾〉への直接的言及を避けた、対中配慮のにじみ出る文書となった。米国に対して日本がブレーキを踏む役回りを演じていることに、中国は大きな安堵(あんど)感を得たことであろう。

 にもかかわらず、日本の一部メディアは「台湾海峡」の明記を踏まえ、日米が共に中国牽制(けんせい)へかじを切ったと歓喜した。実態は果たしてそうなのか。バランシング外交に徹する菅氏が対中融和に傾いた際の紙面が、今から楽しみだ。

                  ◇

【プロフィル】簑原俊洋

 みのはら・としひろ 昭和46年、米カリフォルニア州出身。カリフォルニア大デイビス校卒。神戸大大学院博士課程修了。博士(政治学)。同大学院法学研究科教授。専門は日米関係、国際政治。

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