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【記者発】コロナ禍に父を看取って 政治部・千葉倫之

銀座を歩く人々=23日午後、東京都中央区(松井英幸撮影)
銀座を歩く人々=23日午後、東京都中央区(松井英幸撮影)

 昨冬、父が亡くなった。長く肺がんと闘病し、最後の2カ月は関西地方にある公立病院の緩和ケア病棟で過ごした。

 新型コロナウイルス禍で不要不急の長距離移動は慎んでいたが、状況が状況だ。とはいえ面会は厳しく制限され、県外在住者は病棟内への立ち入りができない。心配で週末に帰省しても見舞いは母らに任せ、病院へ向かう車の運転くらいしか手伝えることはない。駐車場に止めた車内で一人、母らの戻りを待つのは何ともやるせなかった。

 「ちょっと不合理で不人情じゃないか…」と感じた瞬間があったことは否めない。ダメもとで入室できないか掛け合ったこともあるが、やはり認められなかった。母らのスマートフォンを通じ、ビデオ通話で「リモート見舞い」をするのが精いっぱい。在宅看護も考えたが、受け入れ態勢がおぼつかない。そんなうちに結局、別れの日を迎えた。

 知人からも似たような話を聞いた。高齢の祖母が施設に入所中だが、医師からはもう長くない旨を告げられたという。見舞いに行けない知人は「ばあさんは状況が理解できていないから『自分は見捨てられた』と感じているだろう」と嘆く。

 コロナ禍で「看取(みと)り」がままならない状況にあるとは聞いていた。志村けんさんや岡江久美子さんら、コロナで亡くなった著名人の事例も大きく報道された。

 わが家のケースを振り返って、心残りがないわけではない。それでも、病院や高齢者施設でクラスター(感染者集団)が多発している状況を見れば、感染防止を徹底するのが当然のことだとよく理解できる。そして、さまざまな制約に耐えて頑張る医療従事者のことを思うと、あまり感傷でわがままを言うわけにはいかないとも思う。

 父が亡くなる前日にビデオ通話で話をした。「さっきまでコロナ関係の取材をしていた」と伝えたら、「ご苦労さん」とねぎらってくれた。それが最後の会話になった。

 コロナが収束に向かう気配はない。「看取り」の在り方も平常を取り戻すには、まだ時間がかかるだろう。コロナと闘う人たちへの感謝とねぎらいの気持ちを忘れず、自分にできる感染対策をやるしかない。

【プロフィル】千葉倫之

 平成14年入社。千葉総局、秋田支局、東北総局、東京本社整理部、社会部を経て22年11月から政治部。現在は首相官邸を担当。

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