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【主張】緊急事態宣言 危機意識を新たにしたい 政府は蛮勇を振るう覚悟を

緊急事態宣言決定に伴う菅義偉首相の会見を映す新宿の街頭ビジョン=23日午後、東京都新宿区(川口良介撮影)
緊急事態宣言決定に伴う菅義偉首相の会見を映す新宿の街頭ビジョン=23日午後、東京都新宿区(川口良介撮影)

 新型コロナウイルスとの戦いにおいて、ここが真の「正念場」だろう。政府や自治体の後手に回った対応や、ワクチン接種態勢の遅れといった失政に注文は数多くあるが、まず協力したい。国民の協力抜きに、新型コロナ禍を押さえ込むことはできない。

 政府は23日、東京、京都、大阪、兵庫の4都府県に緊急事態宣言を発令した。宣言の発令は3度目で、25日から5月11日までを期間とする。

 ≪深刻な医療体制の逼迫≫

 菅義偉首相は「多くの方が休みに入る機会を捉え、強力な対策を短期集中的に実施し、ウイルスの勢いを押さえ込む」と述べた。西村康稔経済再生担当相は「これまで以上に強い措置を取らないと、感染力の強い変異株を抑えられない」と語った。

 その危機意識は妥当である。

 変異株が猛威を振るう大阪府の医療現場は、すでに事実上の崩壊状態にある。病床の逼迫(ひっぱく)で入院先が決まらずに自宅療養や待機を余儀なくされ、自宅で亡くなるコロナ患者が相次いでいる。

 隣接する兵庫県でも神戸市など都市部のベッドがほぼ埋まっている状態だといい、京都府の病床使用率も政府の分科会が定める指標でステージ4(爆発的感染拡大)に入った。大阪府や関西圏の危機は東京都や首都圏の明日の姿でもある。都のモニタリング会議の専門家は、変異株への置き換わりが急速に進む中で、ほぼ全てが変異株になった場合、都の新規感染者は2週間後には1日当たり2千人超となり、入院患者は6千人を超えると推計した。

 全世代へのワクチン接種がまだ先になる以上、現段階では、人流の抑制しか感染抑止の手立てはない。宣言対象の4都府県は「蔓延(まんえん)防止等重点措置」からの「格上げ」だが、重点措置の期間中も盛り場には人出があり、路上や公園で酒盛りする姿もみられた。

 日本生産性本部によると、重点措置期間中の12~13日のテレワーク実施率は19.2%で、首都圏などに緊急事態宣言が発令されていた今年1月調査の22.0%を下回った。現在の状況は、こうした個人や企業の危機意識の欠如も大きな要因のひとつだ。

 同本部の調査では、新型コロナへの感染に「かなり不安を感じている」との回答は1月の35.2%から、4月中旬には25.5%と大きく減少していた。宣言発令のこの機に、危機意識を新たにしなくてはならない。

 ≪ワクチンの接種を急げ≫

 今回の緊急事態宣言では酒類を提供する飲食店に休業を要請し、提供をしない店には午後8時までの時短営業を求める。百貨店など大型店舗は生活必需品の売り場を除いて休業を要請し、スポーツ観戦を含むイベントは、原則無観客とする。路上飲酒は「注意喚起」としたが、強制力は伴わない。

 宣言期間中は「店ではアルコール類を飲めない」ということだ。飲食店にとってはかなりの痛手となるが、加藤勝信官房長官は協力金について「増額がこれ以上必要とは考えていない」と述べた。にべもなく、これでは協力の意欲もうせてしまう。飲食店に卸す酒店や氷店なども含め、きめ細かな対応が必要である。

 政府に何より望むのは病床の拡大とワクチン接種を急ぐことだ。奈良県は全国で初めて改正感染症法に基づく病床確保を医療機関に要請し、33床を増床した。理由なく要請を拒めば知事が病院名を公表できる。厚生労働省は消極的とされるが、この非常時である。政府が主導して全国で病床を増やすことも検討すべきだろう。

 人流の抑制も病床の拡大も極めて重要な施策だが、ウイルスとの戦いに最終的に勝利を収める決め手はワクチン接種しかない。先行して接種を進めた英国では、ほぼ日常を取り戻しつつある。

 日本では菅首相が米ファイザーとの電話会談で9月末までに約2500万人分の追加供給を受けることで合意したが、接種の担い手は不足したままだ。英国は「注射ボランティア」の採用など思い切った手段を講じたが、日本では歯科医任用の特例さえ手間取っている。政府は英アストラゼネカ、米モデルナとも供給契約を結んでいるが、承認待ちのまま、接種計画も立てられていない。

 こうした経緯に国民は政府の本気度を測っている。蛮勇を振るうほどの覚悟をみせるときだ。

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