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【新聞に喝!】子供を利用する朝日新聞の罪 イスラム思想研究者・飯山陽

朝日新聞社の社旗=東京都中央区築地(寺河内美奈撮影)
朝日新聞社の社旗=東京都中央区築地(寺河内美奈撮影)

 「選択的夫婦別姓」制度導入について、新聞にはそれを「よいこと」として推進する論調が目立つ。3月20日の朝日新聞デジタル版は親が別姓の子供5人に対し、同制度に反対する人が「子供がかわいそう」と主張していることをどう思うかと尋ね、子供が「そう思ったことはない」「かわいそうだと思うなら早く夫婦別姓制度を導入してほしい」「夫婦別姓が認められれば自分たちが嫌な思いをすることもなくなる」などと意見する記事を掲載している。

 同記事には、子供たちの名前に加え、カラー写真まで掲載されている。この状況下で子供に「あなたはかわいそうか」などという質問をするのは実に残酷だ。子供は大人が思う以上に親の顔色をうかがう。それは生存本能に立脚する自然なことだ。別姓の親の庇護(ひご)下にいる子供が「自分はかわいそうだ」と認めることは、親の選択を公然と否定するに等しい。それは自己否定にもつながる。朝日新聞は誘導尋問を行っているようなものだ。

 これは子供に対する一種の搾取でもある。夫婦別姓制度を導入すべきだという朝日新聞のイデオロギーを「無垢(むく)な子供」の口から言わせることにより、効果的に推進できるという計算が透けてみえる。使えるものは何でも使え、という方針なのだろう。

 一方、子供たちは同記事中で、多くの家庭とは異なる複雑な事情に対する戸惑いや葛藤を吐露している。途中で姓が変わったという子供もいる。親は姓を変えないことに固執しつつ、親の都合で子供の姓が変わるのは問題ないという理解ならば、あまりに身勝手だ。

 「選択的夫婦別姓」制度が導入されれば、日本の家庭は夫婦別姓の家庭と同姓の家庭に二分される。子供の姓が父と同じ家庭もあれば、母と同じ家庭もあるということになる。名前を見ただけでその家族のイデオロギーが一目瞭然となる、そういう時代がやってくることを意味する。

 別姓推進論者は、名前は個人の人格の一部であり、それを「強制的」に変えられるのは耐え難い屈辱であると主張するが、当人の「自分らしさ」の保持のために子供が葛藤を抱える可能性や、他者から特定のフィルターを通して判断される可能性、結果的に家族や社会が分断される可能性に対してあまりに無頓着である。そのような可能性などないのだと強弁するために子供を利用する朝日新聞の罪は、誠に重いといえよう。

【プロフィル】飯山陽

 いいやま・あかり 昭和51年、東京都生まれ。イスラム思想研究者。上智大文学部卒、東大大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。著書に『イスラム教再考』など。

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