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【記者発】認知症が不幸ではない社会に 大阪社会部・加納裕子

 3年前、穏やかな笑顔で私を歓迎してくれた。認知症医療の第一人者として有名な医師で、平成29年10月に自らが認知症になったことを公表した長谷川和夫さん(92)。取材には、長女の南高(みなみたか)まりさん(58)が心配そうな様子で同席してくれていたことを覚えている。

 長谷川さんは昭和49年、認知症を鑑別する「長谷川式簡易知能評価スケール(長谷川式認知症スケール)」を開発した。「これから言う3つの言葉を覚えてください。桜、猫、電車」「100から7を順番に引いてください」など簡単な9つの質問への答えを点数化するこの指標は、現在も広く使われている。

 今年1月、長谷川さんと南高さんが共著で「父と娘の認知症日記」(中央法規出版)を出版した。「本人も家族も、大変だけど幸せ」と帯に書かれたその本が気になり、久しぶりに取材をお願いした。東京都内の有料老人ホームで暮らしている長谷川さんへの取材はかなわなかったが南高さんから話を聞いた。

 南高さんによると、長谷川さんは「人様のお役に立ちたい」との強い希望を持ち続けている。3年前の取材の時にもそう話していた。介護される側になって周囲の対応に腹が立つこともあるが、「そんなに怒った顔をしないで」と言われて恥ずかしくなり、「理性を」と自分を戒めることも。「患者側に立って学び、いろいろなことを発信していきたい」と意欲的だ。

 「父は認知症になってよかったとは思っていません。でも、認知症を抱えながらでも不幸ではない。美しいものを見て喜んだり、感動したり、深く考えたりします」と南高さん。「父を応援したい」との言葉に力がこもった。

 認知症の人の介護は、決してきれいごとではすまない。取材で出会った介護家族から、苦労のエピソードをたびたび聞いてきた。それでも、それぞれの家族には長年の歴史と絆がある。幼いころ、自分を安心させてくれた親の笑顔は簡単には忘れられない。

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