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【日曜に書く】論説委員・中本哲也 ハンちやんとアンノーさん

◆おいしい人間

 1月中旬の日曜の昼すぎ、近くの本屋で高峰秀子さんの「おいしい人間」(文春文庫)を買った。その夜、安野光雅さんの訃報をテレビで知った。

 読み始めた文庫はカバーが安野画伯で、本の中でも昭和の大女優が接した「おいしい人間」の一人として、安野さん(「アンノー」という人)との交友が綴(つづ)られている。

 安野さんとは生前に会う機会がなかった。

 大学生のころ、「数学セミナー」(日本評論社)という雑誌を毎月買った。不勉強な学生だった筆者は、ほとんどの記事は理解できないままに読み飛ばすか、眺めるだけだったが、安野さんの連載「算私語録」だけはじっくり読んだ。

 それから今日まで、安野さんの著作は筆者の本棚の「いい場所」で増殖してきた。数学に造詣が深く、文字や言葉に対しても鋭く豊かな感性を持ち合わせた安野画伯のような先生に、国語と算数と図画を教わったらどんなに楽しいだろう。

 コロナ禍のお別れ

 新型コロナ禍が深刻化した作春以降、この「日曜に書く」で亡くなった人について書くのは3度目になった。

 劇作家の別役実さん、女優で「ねむの木学園」創設者の宮城まり子さん、小児科医の川崎富作さん、「歴史探偵」の半藤一利さん、画家で絵本作家の安野光雅さん。コロナ禍のために、開かれてしかるべき「お別れの会」や「偲(しの)ぶ会」ができなかった方もいるだろう。拙(つたな)いコラムではあるけれど、故人を偲ぶきっかけになれば、と思う。

 コラムを書きながら改めて感じたのは、日本の敗戦と敗戦から高度成長期までの過程を実体験として知る世代の人たちに引っ張られ、導かれてこれまで生きてきた、ということだ。

 年長の人たちが亡くなっていくのはしかたがないけれど、切ない。若い世代を引っ張り、導く役割を、戦後生まれが引き継がなければならない。(なかもと てつや)

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