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【風を読む】陛下と首相の距離感は 論説副委員長・榊原智

政府主催の追悼式で、地震発生時刻に合わせ黙とうされる天皇、皇后両陛下=11日午後2時46分、東京都千代田区の国立劇場(代表撮影)
政府主催の追悼式で、地震発生時刻に合わせ黙とうされる天皇、皇后両陛下=11日午後2時46分、東京都千代田区の国立劇場(代表撮影)

 東日本大震災追悼式のテレビ中継を見た友人から感想が寄せられた。

 「追悼式で菅義偉首相は復興は最終段階とし、天皇陛下は復興はまだまだと述べられたように思う。結構正反対の内容ではないか。皇室と菅政権の関係が心配だ」

 お言葉と首相式辞を読めば、そこまでの心配はいらないことが分かる。

 陛下は、「私も、皇后と共に、被災地を訪れてきましたが、関係者の努力と地域の人々の協力により、復興が進んできたことを感じています」「一方で、被災地ではまだ様々な課題が残っていると思います」と述べられた。困難な状況にある人々が誰一人取り残されることのないように、という思いも示された。

 首相は、「被災地の復興は着実に進展」し、地震・津波被災地域では「復興の総仕上げの段階に入った」、原発事故のあった福島の被災地域では「復興・再生に向けた動きも着実に進んでいる」とした。その上で「2千人の皆さんが仮設住宅での避難生活を強いられるなど、長期にわたって不自由な生活を送られている」と述べ、心のケアなどの課題が残っていると指摘した。

 懸念の必要はないが、敏感な友人が陛下のお言葉と首相の式辞に違いを感じたのはなぜか。戦後天皇論の有力な論客だった思想家、葦津珍彦(うずひこ)氏の著作から学んだことだが、天皇と首相の役割、位置づけが異なるからだろう。

 首相は、行政府(政府)を掌握する権力者だ。議院内閣制のもと、ルールにのっとって他の政党、政治家との闘争を勝ち抜いてその座を占める。対立する党派、考えの異なる国民の反対を押し切ってでも良かれと思う政策を遂行するのが役割だ。勢い、有権者からの評価を意識して、自らが属する政権の治績を語らざるを得ない。

 天皇は、権力者よりももっと高みにあるご存在だ。日本の始まりから国の首座にあった君主(今は立憲君主)で、現憲法は「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と表現する。過去から現在、未来にいたる国民の団結の中心、日本永続の象徴といえる。

 天皇陛下が心を寄せ続けると述べられたことは国民の心にしみわたり、被災地への日本の約束となっていく。天皇を戴(いただ)く国のありがたさといえる。

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