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【新聞に喝!】新聞の「使命」と「役割」を思い出せ 作家・ジャーナリスト 門田隆将

 新聞は「人権」をどう考えているのか。最近そんなことをよく考える。森喜朗氏が発言切り取りで「性差別主義者(Sexist)」とされ、五輪の組織委員会会長の座を追われたことも関係しているだろう。

 「女性は優れているので、欠員が出たら必ず(後任に)女性を選ぶ」という話を、前段の「女性が沢山(たくさん)入っている会議は時間がかかる」との部分を抜き取られ、凄(すさ)まじいメディアリンチに遭ったのだ。

 公的、私的を問わず女性尊重の本人や家族には青天の霹靂(へきれき)というしかないだろう。朝日新聞のネット記事から始まったこの騒動は日本の新聞史における汚点といえる。

 新聞が女性の人権に関心が高いのは大いに結構だが、実際にはその姿勢に疑問符がつく出来事があった。

 3月7日、東京都渋谷区の国連大学前に日本で暮らすウイグルやモンゴル、香港などの女性たち約40人が中国による人権侵害に抗議するため集まった。各々(おのおの)が民族衣装をまとい、翌8日の「国際女性デー」に合わせて人権弾圧の即時停止を訴えたのだ。

 世界の最大関心事、ウイグルジェノサイドは『中国衛生健康統計年鑑』でウイグル女性の不妊手術が5年で19倍、男性が12倍になっていることが判明し、新段階に入った。強制収容所での監禁、集団レイプ、殺害などの証言だけでなく、中国側の国家統計でジェノサイドの実態が裏づけられたからだ。

 だが、国連大学前のこの抗議集会を報じたのは産経のネット記事だけだった。私は森氏の騒動の際、女性差別、女性の人権のために白服で結集した野党の女性国会議員たちはどうしたのかと思った。これほど深刻で、無残な女性への人権侵害に彼女たちは何も感じないのだろうか。なぜ怒りを以(もっ)て国会での非難決議をはじめ抗議行動に出ないのか。そして、新聞はウイグル人の「命」と「人権」を守るための紙面づくりをなぜしないのか、と。

 今、世界は岐路に立っている。トランプ米前大統領やその支持者、擁護派に対するアカウント停止に象徴される言論統制だ。異論を差し挟めない全体主義の台頭である。だが新聞はそのことに警鐘すら鳴らさない。新聞人の誇りや使命感は消えてしまったのか。いつか矜持(きょうじ)を取り戻した新聞に再び出会うことができるのか…私はそんなことをどうしても考えてしまうのである。

 「正論」欄執筆に移行するため、6年半に及んだ私の当欄は今回が最後になる。皆さま、長期にわたるご支援、ありがとうございました。

【プロフィル】門田隆将(かどた・りゅうしょう)

 作家・ジャーナリスト。昭和33年、高知県出身。中央大法卒。新刊は『疫病2020』。

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