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【一筆多論】産経特派員が見た戦車 渡辺浩生

 斎藤氏は戦車に轢(ひ)き殺された犠牲者の遺族を取材し、ソ連軍の暴挙を伝えた。この「血の日曜日事件」はゴルバチョフ政権への抗議活動を広げ、年末に起きたソ連崩壊の「引き金」となった。30年後の1月14日付の本紙に掲載された回想記事で斎藤氏は、「独裁の遺伝子」が中国共産党に継承され、現在の新疆(しんきょう)ウイグル、チベットなどでの民族弾圧として今日も続いていると指摘した。

 実際、中露主導の権威主義が民主主義の価値に侵食を続ける今の世界には、強権を旗印にした戦車が随所で見え隠れしている。

 国軍のクーデターで揺れるミャンマーでは治安部隊がデモ隊を実弾で威圧する。東欧ハンガリーでは政権がメディアや会員制交流サイト(SNS)を狙い撃ちにし、政府批判の封殺に躍起だ。中国は、香港の次なる「自由の砦(とりで)」台湾進攻の時期をうかがっている。

 一方で、SNS上に拡散する根拠不明の情報が既存の民主政治とメディアへの不信を高めている。コロナ禍の制約もあり、国際報道に携わる者として、試練のときだと感じている。

 だからこそ特派員は「自由と強権」が衝突する最前線を凝視する。闘う人々の声を聞き、政治権力に肉薄し、迫る戦車の先にある世界を洞察する。そこに、国際報道の可能性がある。(外信部長兼論説委員)

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