PR

ニュース コラム

【一筆多論】危害射撃で守れぬ尖閣、自衛隊迅速投入を 榊原智

尖閣諸島を含む東シナ海上空。手前から南小島、北小島、魚釣島=沖縄・尖閣諸島(鈴木健児撮影) 
尖閣諸島を含む東シナ海上空。手前から南小島、北小島、魚釣島=沖縄・尖閣諸島(鈴木健児撮影) 

 中国が国際法違反の海警法を制定し、海警局が「第二海軍」の本性を露わにした今、政府の尖閣諸島(沖縄県)防衛策に大きなほころびが生じている。

 それは、海上保安庁を主体に、法執行の分野にできるだけ限定して尖閣を守るという方針だ。海保の手に負えなくなっても、まずは海上警備行動、治安出動という法執行の形で自衛隊を出すという。

 政府は、中国の海警局の船が尖閣への接近・上陸の動きをとれば重大凶悪犯罪とみなして、海保巡視船や自衛隊が相手に危害を加える「危害射撃」に踏み切ることが可能との見解を示した。これ自体は当然の見解だが、警察行動としての限定した射撃にすぎない。

 第二海軍である海警船は違う。軍として強力な武器を持ち込める。平成13年の鹿児島県奄美大島沖の不審船事件では幸い外れたが、北朝鮮船が対戦車用の携行ロケット弾を巡視船に向けて発射した例がある。

 海警局は退役駆逐艦、フリゲート艦の改装船を持つ。尖閣にも出没する海警船には海上自衛隊の護衛艦が主砲とするような76ミリ砲を備えたものがある。法執行用として、もっと口径が小さな機関砲しか持たない海保巡視船では太刀打ちできない。法執行という警察権に基づく武器使用では、海保であれ自衛隊であれ、第二海軍として武装してくる海警船を相手にするのは危うい。日本側だけが腕を縛って相手と真剣で斬り合うようなものだ。

 増強は必要だが海保は軍事組織ではない。巡視船は軍事攻撃に対応する造りではなく、外国の海空軍と交戦するための武器を持たず、訓練もしていない。海上保安庁法第25条を改正して自衛隊に準じた行動をとれるようにせよとの声はあるが法改正、訓練、巡視船改装のいずれにも相当な年月がかかる。現下の尖閣情勢には到底間に合わない。

 政府関係者は、尖閣で自衛隊の姿を示すのは日本から事態をエスカレートさせたとみられてしまうから不得策だ-と説いてきた。

 だが、このような自衛隊投入に及び腰の姿勢を漫然と続けてはいけない。日本は法執行、中国は海警船などの軍事行動という構図では尖閣を奪われかねない。

 自衛隊は海保の後詰めとして、尖閣から離れた海空域にいる。日ごろはそれでいいが、中国の海警船や海上民兵などが接近、上陸を試みるなら自衛隊を迅速に投入しなければならない。

 海警船などの武器使用や上陸は日本の主権を侵す軍事力の行使に当たり、そのような侵略には自衛隊が直ちに防衛出動して排除するという国家意志を固め、菅義偉首相が内外に明らかにしておくべきだ。尖閣への自衛隊の常駐も必要だ。

 政府は米政府から、米国の日本防衛を定めた日米安全保障条約第5条の尖閣適用の言質をとってきた。

 適用にはさまざまな態様があり得るが、本質は尖閣防衛戦への米軍の参加で、防衛の主体となる自衛隊の出動が前提となる。抑止力を高め、尖閣侵略をあきらめさせるねらいがある。

 これは、法執行の対応にこだわって、軍としての自衛隊投入には及び腰の現状と矛盾する。尖閣適用というメッセージの抑止力を弱めてはいけない。政府は、米軍の登場以前に尖閣を奪うという中国が望んでやまない状況を差し出す今の尖閣防衛策を急ぎ改めるべきである。(論説副委員長)

関連トピックス

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ