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【風を読む】「余人をもって替え難い」 論説副委員長・別府育郎

取材に応じる東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長=2月4日午後2時15分、東京都中央区(代表撮影)
取材に応じる東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長=2月4日午後2時15分、東京都中央区(代表撮影)

 リオデジャネイロ五輪、パラリンピックの閉会式における「フラッグハンドオーバーセレモニー」は、躍動感にあふれるパフォーマンスで見る者を圧倒した。それは東京大会への引き継ぎ式であるとともに、8分間の見事な日本のコマーシャルでもあった。演出はクリエーティブディレクターの佐々木宏氏であり、歌手の椎名林檎氏だった。若い才能の抜擢(ばってき)と斬新な演出には当初、東京五輪組織委員会の幹部らは否定的だったという。「いいじゃないか」と鶴のひと声で周囲を黙らせたのは、森喜朗会長だったと聞いた。

 ラグビーのワールドカップ日本招致の際には、英国4協会とフランス、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの「創設8協会」に権限が過度に集中する伝統主義に対し、森氏は「仲間内でボールを回していれば、いつまでもラグビーは発展しない」と言い放ち、日本開催をもぎ取った。保守的な世界のラグビー界では驚愕(きょうがく)の「事件」と受け取られた。

 ある時は若い才能の庇護(ひご)者であり、ある時は旧態依然の体制に対する反逆者だった。スポーツ界における森氏が「余人をもって替え難い」存在だったことは一面の事実である。会長を辞した今、その是々非々については改めて冷静に論ずべきだろう。裏面も含む、国内外での調整では確かに、森氏個人の能力に頼るところが大きかった。

 辞任に至った一連の発言に関していえば、全く不適切だった。五輪が目指す方向には明らかに逆行した。

 離任のあいさつでは、リオデジャネイロ五輪入賞者のパレードを、周囲の反対を押し切ってオリパラ合同で挙行したことに触れ、「障害のある人ない人、みな同じように扱って慰労してきた」と述べた。パラ単独では沿道に人が集まらないという思いが根底にあったとすれば、これは必ずしもパラリンピアンを喜ばせない。ロンドンのパラ大会は、五輪終了時に「前座をありがとう」と広告を打った。これが彼ら彼女らの矜持(きょうじ)だ。求めるのは個としての大会の成功や承認であり、決して「かわいそうな人たち」ではない。それは性差の問題意識も同根ではないか。

 晩節を思うとき、最も残念だったのは結果として、余人に替え難い川淵三郎氏を道連れとしたことだった。

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