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【一筆多論】論述力をいかに鍛えるか 沢辺隆雄

全国学力テストが行われた小学校=東京都内(原田史郎撮影)
全国学力テストが行われた小学校=東京都内(原田史郎撮影)

 落ち着いた大人の組織の論説委員室でも、ときに机をたたいて怒鳴る人がいる。こわい。まわりは何事もなかったように仕事を続けるのが秘訣(ひけつ)だ。

 年を取ると皆、怒りっぽくなるのだろう。部内では温厚で知られる私もコロナ禍で飲み会に行けず鬱憤がたまり、他人に当たり散らしたくなる今日この頃だ。イライラにも効くのかどうか、愛飲している明治のヨーグルト飲料R-1の中吊(づ)り広告を先日、地下鉄車内で見かけた。受験生を応援する企画のようで、入試をめぐる疑問や本音をQ&A形式でポスターにしていて、おもしろかった。

 その中の一つ。

 「受験生に聞きました。現文の教科書に載っている作家たちに言いたいこと、あれば、ぜひ」「文章の最後に、筆者の考えをちゃんと書いてください!」

 本稿も最初に言いたいことをちゃんと書けと怒られそう。

 小中高校を通し国語教育は、作者が何を言いたいのか読み取るなど、文学的文章の読解に偏る弊害が指摘されてきたのはたしかだ。入試問題でも5つ程度の選択肢から、作者の考えを選ぶ問題は定番で、作者自身が「誤答」するといったエピソードも語られてきた。

 その見直しが図られ、小中学生の全国学力テストでは、文章や統計資料などから情報を読み取る「読解力」が重視され、出題が様変わりしているのは、ご存じの通りだ。

 15歳(高校1年生)を対象にした経済協力開発機構(OECD)の国際学力調査(PISA)では、日本の生徒の学力は世界トップクラスを維持しているものの「読解力」、特に論理的思考力を要する分野の問題が苦手な傾向が出ている。

 「読解力」は算数・数学や理科など、国語以外の教科の学力を支える。

 昨年結果が公表された小学4年と中学2年を対象にした国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)では、世界5位以内の好成績を維持したが、思考力、記述力を試す設問で成績がふるわなかった。

 例えば小学4年の理科で砂漠の絵に描かれたものの中から、生き物(例・サボテン、ラクダ)と、生き物でないもの(例・太陽、石)を2つずつ書く設問で日本の正答率は37%と、国際平均45%を下回った。

 身近にない環境、習っていないことについて、知識を生かし、答えを導き出すのが苦手なようだ。

 中学2年理科では、真空状態のガラス容器の中に吊(つ)るした携帯電話の着信音が外に聞こえるかどうか問い、理由を記述する出題で「音は真空中では伝わらない」などと答えられた正答率が56%にとどまった。この設問の国際平均(正答率38%)は上回ったものの、好成績の台湾(正答率78%)と開きが目立った。

 マークシートのような選択式の問題ばかりでは、説明する力が育たない。大学入学共通テストで国語・数学の一部に記述式を導入する案は見送られたが、各大学の個別試験を含め、工夫のしどころだ。

 専門家からは、スマートフォンを使いネット上で短文をつぶやけても、出題文を根拠に自分はこう思うと論理的で説得力のある文章を書ける生徒が少ないとの指摘がある。相手の意見を十分聞き、自分の言葉を発信する日頃のコミュニケーションも大切にしたい。(論説副委員長)

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