PR

ニュース コラム

【記者発】被災者とつながる両陛下のお気持ち 社会部・緒方優子

昨年7月の豪雨災害で被災した熊本県の自治体関係者や被災者らと画面越しに懇談される天皇、皇后両陛下=1月27日午後、赤坂御所(宮内庁提供)
昨年7月の豪雨災害で被災した熊本県の自治体関係者や被災者らと画面越しに懇談される天皇、皇后両陛下=1月27日午後、赤坂御所(宮内庁提供)

 画面に映し出されたのは、豊かな緑と清らかな川に囲まれた、のどかな街並み。次の瞬間、画面が切り替わると、茶色の濁流が橋を破壊し、中心街の商店や住宅をのみ込む様子が映し出された。水が引いた後の温泉宿の駐車場には、泥にまみれ、逆立ちになったままの車も見える。

 1月27日、昨年7月の豪雨で被災した熊本県の自治体と赤坂御所をオンラインで結んで行われた天皇、皇后両陛下の被災地お見舞い。冒頭は、両陛下がご覧になったという各地の被災状況を県側がまとめた動画の一場面だ。

 通常、両陛下の被災地ご訪問には知事や首長が同行し、被災地域を実際に見て回られる。動画による視察は異例だが、両陛下は美しい街並みと悲惨な光景の対比に、「被害の大きさを改めて認識されていた」(側近)という。

 被災者らとのご懇談も、画面越しに行われた。「被災された方の生活は-」。住民を気遣う天皇陛下のお言葉に、芦北町の竹崎一成町長(73)が思わず声を詰まらせる場面もあった。竹崎町長は懇談後、「仮設住宅でクリスマスやお正月を迎えた子供たちや、損壊した自宅の一角で生活を続けている人もいる。優しいお言葉でそうした町民のことがよぎり、涙をこらえきれなかった」と打ち明けた。

 新型コロナウイルス禍で昨年以降、両陛下の地方ご訪問は、「密」を避けるために実現の見通しが立っていない。それがたとえ、両陛下が心を寄せ続けられている災害の被災地であっても、だ。

 両陛下は今回、一昨年の台風19号の被災地訪問の時と同様、色を抑えたセーターとジャケットで臨まれた。犠牲者への哀悼と、困難な状況にある人々へのご配慮。被災者に「対面」する際の変わらぬご姿勢が、装いからも伝わる。皇后さまはこの日、妻の遺影を携えた男性に、「奥さまのお姿も見せていただきました」とあえて言葉にすることで、手を握り返すように、画面越しのつながりを確かめられた。

 間もなく10年を迎える東日本大震災の被災地も、両陛下はオンラインで視察される見通しだ。ある宮内庁幹部は、「どんな形でも、両陛下のお気持ち、心の通い合いが被災地ご訪問の中心にあることは変わらない」と話す。

【プロフィル】緒方優子

 平成22年入社。神戸、水戸勤務の後、27年から東京本社社会部。原子力取材班、警視庁捜査1課担当を経て、現在宮内庁を担当。

関連トピックス

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ