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【朝晴れエッセー】お百度参り・2月13日

 人の記憶は何歳まで遡(さかのぼ)ることができるのだろう。私の場合、最も古くかすかに覚えている記憶は、4歳の頃である。

 それは、深く長い眠りから覚めた後、周りの大人たちから「よかった、よかった」と笑顔で頭をなでられた記憶である。

 季節はちょうど今頃、私は急性の重い病にかかった。医師からは「今夜が峠」と宣告され、両親は治癒を祈りながらも覚悟を決めていた、という。

 実は私が昏睡(こんすい)中に、祖母が近くの神社でお百度参りをしていた、というのをかなり後年になって知った。戦争で2人の息子を亡くした祖母にとって、久々に生まれた内孫、それも長男である私の命を、何としても救いたかったのだろう。

 寒風吹きすさぶ真冬の参道を、背中を丸めながら、はだしで何度も往復する姿を想像すると、胸が痛む。神仏にすがる以外方法がない、と考えた明治生まれの女性の執念が感じられる。

 祖母は春になって脳出血で倒れ、半年近くの闘病を経て亡くなってしまった。祖母の死と、お百度参りとの関連を指摘する声は、誰からも聞こえてこなかった。

 なので、祖母が私のために自分の命を削った、と思うのは私の思い込みかもしれない。ただ、祖母への感謝の気持ちはいくつになっても忘れまい、と思っている。

 救われた命という自覚はなかったものの、振り返って、教師・海外ボランティアとして、少しは社会に貢献できたか。

 こたつで熱燗(かん)を傾けながら祖母に思いをはせた。

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