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【記者発】リーダーの言葉 神戸総局・宝田良平

和歌山県の仁坂吉伸知事=県庁
和歌山県の仁坂吉伸知事=県庁

 「保健所ってもう、濃厚接触者にも電話してこないんですかね?」

 先日、大阪の知己の取材先とこんな話になった。聞けば、新型コロナウイルスに感染して重症化した人と長時間一緒にいたのに、行政からは何の沙汰もなく、自前でPCR検査を受けて陰性を確かめたという。

 感染者が保健所の聞き取りにきちんと答えていない可能性もあるが、都心部ではもはや保健所による濃厚接触者の追跡(積極的疫学調査)に手が回らなくなっている。

 患者対応を優先させるため、東京都や神奈川県では1月から調査対象を縮小。大阪府は「最後の最後まで石にかじりついてでもやる」(吉村洋文知事)としているが、追いつかない現状はあるのだろう。

 危機に際し、確かに焼け石に水の感もある地味な調査の必要性は響きにくく、また自治体のリーダーも多くの言を割かない。

 例外的に、繰り返しそれを訴えていたのが、和歌山県の仁坂(にさか)吉伸知事だ。昨年からずっと、徹底した積極的疫学調査をはじめとする保健行政の機能強化を説き続け、その議論なしに国民の行動制約ばかり求めるのは「短絡」と戒めた。

 「この手の問題は精神論ではいけません。もっと頑張れと司令官が言うだけでは失格です。大事なのは技術です。その技術は、今の事態とコロナの感染状況から出てくる論理的な考察によってしか生まれません」

 和歌山県庁ホームページに掲載されている「知事からのメッセージ」は、通産官僚出身の実務家らしい記述と豊富なデータ引用でコロナ以降よく話題になる。ページビュー(PV)は「以前はよくても1000ほど。今は50万PVになることもある」(同県広報課)。

 さて「言葉で伝えようとする思いはあるのか」(立憲民主党の蓮舫議員)とまで揶揄(やゆ)された菅義偉(すが・よしひで)首相との対比で、欧米のリーダーの雄弁をもてはやす報道もあったが、コロナの状況は日本よりよほど深刻だ。

 和歌山県知事の“地味な発信”に注目が集まることに、多くの国民が求めていることが表れていると思う。きれいごとはいらん-。

【プロフィル】宝田良平

 平成13年入社。大阪社会部時代は刑事司法分野を中心に、「大阪維新の会」が掲げる大阪都構想をめぐる動きも取材した。昨年2月から神戸総局勤務。

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