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【ソロモンの頭巾】長辻象平 原子力水素 地球を守る日本の次世代原発

HTTRの原子炉建屋。東西南北約50メートルで地上部の高さは24メートル。原子炉は地下部に設置されている (日本原子力研究開発機構提供)
HTTRの原子炉建屋。東西南北約50メートルで地上部の高さは24メートル。原子炉は地下部に設置されている (日本原子力研究開発機構提供)
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◆苛酷事故は無縁

 HTTRの正式名は「高温工学試験研究炉」で熱出力は3万キロワット。開発の第1段階なので発電機は備えていないが、高温ガス炉の基本機能を完備している。

 1998年の運転開始だが、あまり知られず、地味な存在だった。それが10年前の東京電力福島第1原発事故を機に一転、期待の星となったのだ。

 第1の理由は際立った安全性の高さにある。普通の原発とは炉心の素材も構造も全く異なる新型炉だ。

 高温ガス炉は構造上、大型化に向かず、日陰の存在に甘んじかけていたのだが、今や世界の原発の市場は小型モジュール炉に転じている。これが注目される第2の理由。運転に水を必要としないので立地点は内陸や砂漠にも広がる。

 地球温暖化防止の「パリ協定」の下での水素の需要の高まりが第3の理由となっている。

◆夏にも運転再開

 HTTRは現在、原子力規制委員会による安全審査を受けている。新規制基準への適合は昨年6月に認められ、工事計画の認可も進行中だ。対策工事などが順調に進めば今夏の運転再開が見込まれる。

 福島事故後、丸10年間の停止を経て、長いトンネルの出口の光が前方に明るく見えてきた状態だ。

 「パリ協定」の運用が昨年から始まり、世界は脱炭素社会への動きが急だ。日本政府は国内外に2050年までのCO2排出実質ゼロを宣言したものの、太陽光など再生可能エネルギーの主力化だけでは達成できないことは明らかだ。

 今冬の寒波と大雪で太陽光発電は弱点があらわになった。原子力発電の不足分を補っていた火力発電は天然ガスの調達が滞り、深刻な電力不足に直面した。

◆日本の切り札だ

 欧州とは異なり、島国・日本の電力安定供給にはエネルギーの多様性が必要なのだ。燃料を炉に入れると1年以上、連続運転できる原子力発電は重要な存在だが、福島事故のトラウマで従来型の原発(軽水炉)の新増設は難しい。

 そこで、シビアアクシデントフリーの高温ガス炉の実用化が急がれるのだ。

 日本の高温ガス炉技術は目下、世界の先頭に立っている。ポーランドも英国も日本の技術協力に強い期待を寄せている。

 バイデン米大統領が計画中の気候サミットで、菅義偉首相は脱炭素・親水素のイノベーションとして日本の高温ガス炉を世界の首脳に披露すればよい。最も有意義なメッセージだ。

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