【ポトマック通信】「正義」「不正義」のもろさ 分断修復の責務
米国のトランプ前大統領を支持する勢力が連邦議会議事堂を占拠した事件では、民主主義について深く考えさせられた。
「票を盗まれた」と主張し、昨年11月の大統領選でのトランプ氏勝利を疑わない一派が「民主主義の殿堂」である議事堂を襲撃する様子には、戦慄が走り、米国独立の理念を揺るがされたように感じた。
米国の教育では、とかく「行動すること」が求められる。「正しい」と思った自らの考えに基づいて行動を起こすことに大きな価値が置かれている。
これまでもそうした行動が大きなうねりとなり、社会運動となり、米国の歴史を変えてきた。
だが、今回の議事堂襲撃・占拠事件で、彼らの正義は多くの人にとっては不正義となってしまった。とはいえ、彼らがいったん「正しい」と思ったことを、容易に修正するとも思えない。民主主義のもろさを垣間見た気がした。
米社会の分断は大統領選などのたびに指摘され、その克服が課題とされてきたが、ここまで衝撃的なものは記憶にない。
歴史を長い目でみれば大きな変化の中での象徴的出来事ということになるのだろうが、深い分断から協調を取り戻し、民主主義の権威を復活させる難しい責務をバイデン政権は負っている。(住井亨介)