【朝晴れエッセー】忍耐のその先に・1月30日
「これ以上どう自粛すればいいのだろう」
私の住む街に2度目の緊急事態宣言が出された。この1年、自分や家族を律して衛生面や行動面で精一杯の感染防止対策を続けてきたつもりなのに…と途方に暮れてしまった。
そんななか、ふと学生時代に私を支えてくれた中島みゆきの『ファイト!』を聴いてみた。すると色々な試練と戦っていた四半世紀前の熱い日々がたちまちよみがえってきた。
ベビーブームに生まれた就職氷河期世代の私にとって、学生時代はいつも大勢の人にもまれ競争の繰り返しだった。
受験戦争の末に入ったマンモス大学で、大所帯の部活の主将として個性的な部員たちとの人間関係に悩んだ日。就職活動の面接がうまくいかず、御堂筋を何駅分も悔し涙を流しながら歩いた日。
今のようにパソコンやスマホですぐに音楽が聴ける時代ではなく、大学近くのレンタルショップで片っ端からCDを借りてはカセットテープにダビングしていた。
どの曲も世の理不尽や人には言えない黒い感情を全て代弁してくれているような歯切れの良い歌詞で、幾度となく心を奮い立たされた。
そして改めて思うのは、かつてのどんな試練も今の私の糧になっているということ。
当時と今とでは境遇や悩みは異なるが、先の見えない不安や焦りは同じだ。
コロナ禍で身につけた忍耐や知恵は必ず私を成長させてくれると信じて、再び「みゆき節」に勇気をもらっている。
田中里江 46 大阪市鶴見区