PR

ニュース コラム

【朝晴れエッセー】父の箪笥(たんす)・1月27日

 生家で蔵を1つ壊した。そのとき父の婿入り箪笥(たんす)をもらった。隠し戸棚の奥からさびた鍵が出てきた。父の父から母の父への送り状と一緒に。

 昭和25年1月、父は満22歳で婿入りした。戦後の混乱期、生家で一番の懸念は農地改革であった。江戸では郷士、明治には自由民権の家は、長男が戦争で体を壊し、家の存続が危ぶまれた。

 それまで作男が担っていた田畑を耕作できる者が必要。姉は嫁ぎ、三女の母が女学校を終えて家にいた。そこに遠縁の父を迎えた。1つ年上の花嫁だった。

 父の生家も次兄は高等師範を出たが、母をがんで亡くし、妹たちはまだ女学生、中学卒業後進学は叶(かな)わず、父は長兄と農業に就いていた。

 戦後、物のない時代、父の父はこの箪笥をどのような思いで作り、届けたのだろう。父はどんな気持ちで婿入りしたのだろう。その年12月、私が生まれ、年子で妹も生まれた。しかしその後はなく、足の悪い私に代わり妹がやはり婿を取り、今は甥(おい)が継いでくれている。

 父は妹が産んだ初孫を見た後、急性骨髄性白血病で50歳を目前にして亡くなった。

 まだ独り身だった私を心配していたが、昨年ルビー婚を迎えることができた。金婚まで2人で元気でいられる自信はないとこちらから催促し、子供たちに花束をもらった。

 父の箪笥は私の嫁入り箪笥、会津桐の3点セットとともにある。中には妹と分けた母や祖母の着物が入っている。

白井まや 70 福島県会津美里町

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ