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【一筆多論】12年の空白、全力で埋めよ 佐々木類

熊本県議会全員協議会で川辺川ダムの建設容認を表明し、議員の質問に答える蒲島郁夫知事=2020年11月19日
熊本県議会全員協議会で川辺川ダムの建設容認を表明し、議員の質問に答える蒲島郁夫知事=2020年11月19日

 昨年7月初め、熊本県を襲った集中豪雨は65人の尊い命を奪った。失わなくてよかった命が失われた。ご冥福を祈りたい。

 県南部の球磨川が氾濫したとの一報を聞いて脳裏をよぎったのが、球磨焼酎の蔵元の安否だった。

 2年ほど前、社の先輩に誘われ、都内で開かれた米焼酎の試飲会に参加したことがある。焼酎に合うすしネタを探る企画だった。福岡市の九州総局から異動したばかりで故郷に戻った気になった。法被を着た蔵元の楽しげな顔が浮かぶ。そのいくつかが被災した。

 氾濫した球磨川は、「暴れ川」の異名を持つ日本3大急流の一つとして知られる。美しい山々から流れ出す良質の水と米で造られるのが球磨焼酎だ。

 蔵元は、人吉市と球磨郡に計27ある。球磨焼酎酒造組合によると、このうち3つの蔵元が全壊、半壊が1つ、6つの蔵元が一時製造停止となった。蔵元だけではない。多くの家屋が浸水し、倒壊した。

 この惨状を目の当たりにした蒲島郁夫熊本県知事が12年前の脱ダム宣言から一転、川辺川ダム建設計画の容認に方針を転換した。

 昨年11月のことだ。東の八ツ場ダム(群馬県)とともに白紙撤回の象徴だった球磨川の支流、川辺川ダム建設計画の撤回を取り下げたのだ。蒲島氏は19日の県議会でこう語っている。

 「現在の民意は命と環境の両立と受け止めた。これこそが流域住民に共通する心からの願いではないか」

 知事選に初当選した平成20年、蒲島氏は「ダムによらない治水対策を極限まで追求したい」と脱ダム宣言をして注目を集めた。12年前のことである。

 当時の民主党政権も「コンクリートから人へ」をスローガンに、川辺川ダム建設計画凍結を決定した。

 球磨焼酎のピリリとした味を思い出しながらふと思ったのが、「もしダムがあったらこれほどの被害は出なかったのではないか」との疑問である。球磨川流域に住んだこともないよそ者が、賛否をめぐり長く対立してきた問題をあれこれ語るのはどうかとは思う。

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