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【風を読む】レイ・チャールズ 論説副委員長・別府育郎

 東京メトロ東西線東陽町駅のホームを視察する赤羽国交相(右から2人目)=12月2日、東京都江東区
 東京メトロ東西線東陽町駅のホームを視察する赤羽国交相(右から2人目)=12月2日、東京都江東区

 いまは亡き盲目のソウルシンガー、レイ・チャールズの来日公演を聴きにいったことがある。

 開演。ステージ上ではすでにバックバンドがスタンバイしていた。

 舞台の袖から関係者に手を引かれて正面の電子オルガンにたどり着いたレイは、指を1本立てて頭上に掲げると、そのまま振り下ろしたキーボードの音に、バックバンドが見事に合わせて曲が始まった。静寂から大音量へ。レイの目が見えないことは、聴衆の皆が知っている。盲目を逆手にとったパフォーマンスだった。

 会場は大いに沸いた。だが、かの天才にして介助の手を借りなければ、キーボードの前の正確な位置に立つことはできなかったのだ。

 自らが主役のステージ上と違い、見知らぬ人が行き交う駅のホームは、目の不自由な人にとってどれだけ危険な場所なのだろう。ベンチに座り、10秒だけ目を閉じてみる。不安で不安でたまらなかった。

 昨年11月29日、東京メトロ東西線の東陽町駅で、白いつえを持った68歳の男性がホームから転落し、電車にはねられて死亡した。反対側のホームには別の電車が止まっており、自分の側のホームに電車が止まっていると勘違いした可能性があったという。昨年7月26日にはJR阿佐ケ谷駅で、目が不自由な51歳の男性が転落し、電車とホームの間に挟まれて亡くなった。

 いずれの駅にもホームドアは設置されていなかった。鉄道会社も努力していないわけではない。東陽町駅ではホームドアの設置工事中で、今年2月下旬に完成予定だった。

 転落防止にホームドアは有効だが、一朝一夕には完成しない。東京メトロで全ての駅に設置が完了するのは5年後の令和8年になるという。

 それまでは駅員の介助、見守りが頼りだが、そのための増員もまた、一朝一夕にはできない。

 理想をいえば、利用者全員が目の代わりを務め、手を貸せばいいのだ。目の不自由な方は、堂々と介助のお願いを口に出してもらいたい。

 どちらも、気恥ずかしい思いなど持つ必要はない。お前はそうしているのかと問われれば、やっていない。これからは、やる。

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