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【主張】「地層処分元年」 原子力発電を持続可能に 脱炭素社会構築に至る道だ

 わが国の実質的な「地層処分元年」として令和3年が明けた。

 原子力発電で生じる高レベル放射性廃棄物(核のごみ)はガラス固化体に加工され、最終処分法に従い地下深い岩体中の坑道に埋設されることになっている。

 その地点を選ぶプロセスの第1段階である「文献調査」が北海道寿都町と神恵内村で1月から本格的に始動する。両町村の地質情報を確認する文献調査の受け入れは昨秋に決まっていたが、約2年間にわたる実務の本格的な展開は今月からだ。国民全体で地層処分事業の大切さの理解を深めたい。

 ≪文献調査地をより多く≫

 文献調査の範囲は土地の隆起や浸食、噴火、地震と活断層、鉱物資源などの分野にわたる。

 地層処分事業を進める原子力発電環境整備機構(NUMO)は、既存の論文や報告書といった文献類から得られる地質データを基に寿都町と神恵内村内の土地の中から第2段階の「概要調査」に進める可能性を備えた数キロ四方の領域を探す。

 この調査と並行し、NUMOは職員を現地に常駐させて住民との「対話活動」に力を入れる。

 対話の場では、地層処分の技術や安全確保の仕組み、地域の地質などを説明するだけでなく、処分事業が進んだ場合に地元の社会経済に反映される効果についても議論を深めていく。

 住民とNUMOの間のこうした双方向コミュニケーションが重要だ。核のごみの地層処分で先頭を行くフィンランドやスウェーデンでは対話活動での意見交換が地場産業への風評被害防止などに生かされた好例があるという。

 大いに参考になる先例だ。NUMOと国には、対話活動の進行状況などをわかりやすく全国に発信してもらいたい。

 文献調査に関心を持ちながら応募に踏み切る決断がつきかねている市町村もあるだろう。透明性を備えた具体的で活発な議論は、そうした自治体の背中を押すことになるはずだ。

 文献調査には、北海道だけでなく本州や九州、四国からも手が挙がることが望ましい。複数の多様な地質の土地が文献調査から概要調査、精密調査へと段階的に絞り込まれ、約20年後に最終的に最適の1地点に決まるのが地層処分地選定の理想的な姿である。

 高レベル放射性廃棄物の地層処分の合理性は、国際的な共通認識となっている。フィンランド、スウェーデンは処分地が決定済みで、審査が中断中の米国もこの段階にある。フランスは精密調査、スイス、中国、カナダ、ロシアは概要調査に相当する段階だ。

 カナダの例では2010年の時点で20以上の自治体から地層処分への関心が表明され、今春には2地点でボーリング調査が始まることになっている。

 ≪対話活動で理解を促進≫

 半世紀にわたる原子力エネルギーの利用の結果、高レベル放射性廃棄物は増加を続け、地層処分を待つ課題として存在する。われわれは意識しないうちにも原子力発電の利便性を享受してきたことを自覚することが必要だ。それを忘れると感情的かつ一方的な反対運動に傾いていく。

 文献調査では対話活動を通じて国民全体に地層処分への理解が広まる効果も期待される。鈴木直道北海道知事は文献調査に難色を示し続けているが、政治家としての視野が狭きにすぎよう。健全な議論の芽を摘む行為であることに気付くべきである。

 地層処分は原子力発電を持続可能にし、核燃料サイクルを循環させる上で必須の事業なのだ。

 政府は2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出実質ゼロを目指している。その達成には太陽光や風力発電といった再生可能エネルギーとともに大出力の安定電源である原子力発電の活用が欠かせない。

 脱炭素という世界の趨勢(すうせい)に従いつつ日本のエネルギーの強靱(きょうじん)化を進めるためには、高レベル放射性廃棄物の地層処分が必要だ。

 昨年には日本原燃(青森県六ケ所村)の再処理工場とMOX燃料工場の安全対策が新規制基準に適合していると原子力規制委員会によって認められた。ともに核燃料サイクルの中核施設だ。地層処分と併せ、原子力のバックエンド事業分野での前進である。

 かたくなな反対ばかりでは、世界の潮流から取り残される。

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