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【朝晴れエッセー】実家の正月・1月3日

 「おお、来たかぁ!」と、着物姿の父が笑顔で迎えてくれる。玄関先の寒椿(かんつばき)も「おかえり」と言ってくれているようだ。

 弟たち夫婦は先に来ていて、お互い新年のあいさつをかわす。娘たちも恥ずかしそうにペコリ。寒さをまとったコートを脱ぐと実家のあたたかさにホッとする。

 私はその足で母の様子をみに行く。体調がすぐれず、目も耳も少し不自由になってきた。だからほとんどベッドの中だ。

 娘たちが後ろから「あけましておめでとう!」とかけ寄ると、母はコクッとうなずく。私も耳もとで「おめでとうございます」と声をかけると、またコクッとうなずいてくれる。母の部屋はひんやりしている。

 父が準備してくれた肉で焼肉をした後は、お正月恒例のトランプ大会だ。七並べやババ抜きで盛り上がる。

 「あいたー! やられたぁ!」とおでこをたたいて悔しがる父、喜ぶ娘たち、つっこみを入れる弟、みんな笑っている。そんな楽しいひととき、四半世紀前の正月を思い出す。

 20歳の頃に戻って親孝行をやりなおしたい。母をもっと誘って買い物や行楽地に行けばよかった。父のお酒の相手をして自慢話を聞けばよかった。優しい言葉をもっとかければよかった。

 近頃、あのときの父の笑顔にやけに会いたくなる。

東順子(64) 大阪府松原市

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