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【風を読む】「傍流」の力に注目を 論説副委員長・沢辺隆雄

 新聞社を舞台にした『傍流の記者』(本城雅人著、新潮社)が文庫になったのを機に改めて読んだ。著者は本紙の浦和総局を経て、サンケイスポーツのプロ野球担当記者などとして活躍した経歴を持つ人気作家だ。同書は直木賞候補にもなった。

 社会部の黄金世代といわれた同期入社の6人を主人公に物語が進む。社会部と政治部の勢力争い(フィクションです)のほか、登場人物のモデルとみられる人たちの顔も浮かび、何度読んでもおもしろい。「傍流」は出世争いに敗れた反主流派というより、権力におもねらず、不正と対峙(たいじ)する者の気概を表しているようだ。

 組織のあり方を考える企業小説として読んでも楽しめる-と、以下こじつけるようで恐縮だが、「傍流」を好むのは新聞社のほか、教員の世界にも共通する。生涯一記者、生涯一教師といえば、格好よく聞こえるが、チームワークが下手で、上司にいらぬ反発をすることも少なくない。

 教員社会の横並び意識が強い弊害は、昔から指摘されてきたことだ。国旗、国歌の指導などをめぐり、一部教員が校長の言うことを聞かない例も相変わらずある。

 文部科学省の教員人事に関する調査で、いったん校長や教頭になっても降格を希望する例が絶えない。力のある先生が校内で協力を得られず、多忙感ばかりで、腕を振るえない状況を示しているようだ。校長がリーダーシップを発揮しやすい組織運営へ、法改正を含め改革が進められてきたのだが。

 上司の様子を見て、あまり出世したくない、役職につきたくないと思われる組織は健全ではないといわれる。学校も、本来なら権限が広がれば、子供たちのためにできることも多くなり、大いに腕を振るえるはずなのに。

 『傍流の記者』には、「社会部が戦ってこられたのは、先輩たちが築き上げたものを…受け継ぎ、次の者へと確実に繋(つな)げていったからだ」というくだりがある。世代交代が進む教員の世界にも、失敗を含め、さまざまな知識や経験を持つ「傍流」の存在が欠かせない。「傍流」には組織のご意見番、用心棒としての役割も少なくない。コロナ禍で不安なとき、危機を乗り越える絆が問われている。

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