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【スポーツ茶論】老獪な北朝鮮 黒沢潤

 色黒で、眼光鋭い“海千山千”の老獪(ろうかい)な風貌を持ち、手持ちの原稿を読むでもなく、流暢(りゅうちょう)な英語で十数分のスピーチをこなす-。6、7年前、ニューヨークの国連本部の会議場で、濃紺の高級スーツに身を包み、威風堂々と演説する外交官の姿にたびたび、くぎ付けになった。北朝鮮の国連次席大使、リ・ドンイル氏だ。

 「まさか、原稿を丸暗記していないだろうから、“ノー原稿”で、あれだけのスピーチをしているのだろう。かなりの能力の持ち主とみる」。日本の政府代表部幹部も舌を巻くほど、彼の異能ぶりは国連内で知れ渡っていた。

 北朝鮮は当時、国連で自国の人権侵害を追及され、政府要人を母国から呼び寄せてまで反証する小会合も国連本部内で開催した。記者団に対しては、人権侵害を否定する内容のDVDを配布するなど、滑稽なPR戦に終始した。

 本国から来た北朝鮮要人は取材しようにも冷厳、無感情で、取り付く島もない。だが、会合の合間に会議室から出てきたリ・ドンイル氏は居丈高でもなく数分間、丁寧に直接取材に応じた。こんな人物を抜擢(ばってき)している北朝鮮政府の老獪ぶりに驚かされた。

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 先日、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が韓国の財団から、「ソウル平和賞」を授与された。2018年平昌五輪のアイスホッケー女子で、五輪初の韓国・北朝鮮合同チーム結成を導いたことが評価された。授賞は、来年の東京五輪でIOCを動かし南北チーム結成を再現、北朝鮮との真の融和を実現したい文在寅(ムン・ジェイン)政権の意向を反映したものだ。

 ただ、文政権が将来の朝鮮半島統一も視野に進める融和など、そう簡単にいくものか? 老獪な北朝鮮相手に、そうは問屋が卸さないだろう。

 独裁体制の金正恩政権を「あらゆる手」で国際社会に取り込み、“社会性”を持たせるのは悪くない。「無策よりまし」との考えもあろう。

 ただ、現実は甘くない。寒風吹きすさぶ平昌五輪開会式の貴賓席で、スキーウエア姿のペンス米副大統領、分厚い黒のコートに身を包んだ正恩氏の妹・与正氏が数メートルの距離で着座した。4カ月後、正恩氏とトランプ米大統領のシンガポール会談が実現。トランプ氏は板門店を訪れ、正恩氏は文大統領とも握手したが、北朝鮮はその後、韓国に罵詈(ばり)雑言を浴びせ掛けた。冷徹に計算し、自国に有利なら韓国にすり寄り、不利なら握手した相手をも罵倒する-。これが、朝鮮半島の現実だ。

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