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【日曜に書く】論説委員・長戸雅子 歴史の出番を待つ一冊

2018年5月、ソウル中央地裁での初公判で被告席に着く韓国の李明博元大統領。10月に懲役17年の判決が確定した(共同)
2018年5月、ソウル中央地裁での初公判で被告席に着く韓国の李明博元大統領。10月に懲役17年の判決が確定した(共同)

 「帝王」ゆえの運命の変転だろうか。米国ではなく韓国のことである。

 米大統領選の直前というタイミングでもあり、予測された結果だったので大きなニュースにはならなかったが、巨額収賄罪などに問われていた韓国の李明博(イ・ミョンバク)元大統領(任期2008~13年)の懲役17年の判決が確定したとの一報に何ともいえない気持ちになった。

 任期終盤での竹島上陸など、日本にとって苦い記憶の残る李氏の判決にそんな思いを抱いたのは「頂点」にあったときの李氏の姿を記者が垣間見たことがあるからだと思う。

「王」から独房に

 08年9月だったと記憶する。国連総会が開幕し、各国の首脳が米ニューヨークに集まっていた。市内のホテルのロビーで、見知った顔が視界に入り、足が止まった。タキシード姿の李氏だった。正装した夫人が横に並ぶと、その後ろに笑顔の側近ら外交団の面々が自然と列を作った。金色の粉がそこだけふりまかれたような華やかさ。背筋を伸ばして集団の先頭に立つ夫妻は王と王妃のようだった。

 あれから10年余り。78歳の李氏は現在、刑事施設内の4坪ほどの独房で過ごしている。

 李氏だけではない、朴槿恵(パク・クネ)前大統領も含め、韓国では存命の大統領経験者4人がみな実刑判決を受けている。

複数の深い亀裂

 それほど汚職が多いのかという疑問もわいてくるが、大統領経験者の悲惨な末路はやはり韓国の政治風土によるものが大きいだろう。17年に朴氏が訴追されたとき、朝鮮日報は「帝王的大統領の予測された悲劇」と題した記事で韓国大統領の権力の独占は、「生きるか死ぬかの対決政治」につながり、「政権の反対側にいる政治勢力は、大統領の任期中つねに『協治』よりもあら探しに没頭するようになる」との専門家の言葉を紹介していた。つまりは政治報復だ。

 親北朝鮮と反北朝鮮。南東部を支持基盤とする保守派と南西部を地盤とする革新派。そこに政権の内紛や検察権力、強力な市民団体の思惑がからみあう。

 南北の統一以前に、韓国内に脈打つ複数の深い亀裂を示すニュースに接するたび、「分断国家の統一」に深い思いをはせていた日本人外交官を思い出す。

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