PR

ニュース コラム

【朝晴れエッセー】色鉛筆・12月1日

 昔、まだ姑(しゅうとめ)が元気だった頃、2~3カ月に1度、紙袋を持って私を訪ねてきた。3時間ほど世間話をしてから「これ使ってね」と紙袋を部屋の隅に置き、帰っていくのが常だった。

 袋の中にはいつも子供服やオモチャ、バスタオルなどが入っていた。しかし、性格のきつい姑が私は苦手だった。

 あるとき、紙袋の中に色鉛筆のセットが入っていたことがあった。2人の子供がまだ幼く忙しかった私はろくに確かめもせず、子供にはまだ早いと判断して色鉛筆を子供用のタンスにしまいこみ、そのこともすっかり忘れていた。

 それから数年たち、子供たちは小学生になった。タンスを片付けていると、姑が持ってきてくれた色鉛筆が出てきた。もう子供たちに使わせてもよい頃だろうと、手に取ってそれをよく見た私はハッとした。

 それはステッドラーの高価な色鉛筆で子供用ではない。画家や美術家を目指す者が使う色鉛筆で、画材専門店でなければ売っていないはずだ。

 姑は美大を出た私のために買ってきてくれたのだろう。姑の家の近くに画材専門店はなかった。いったいどこまで行って買い求めてくれたのだろうか。聞きたくても姑は認知症が始まり、施設に入所してしゃべることもできなくなっていた。

 あれから月日は流れ、子供たちは結婚して今度は私が姑になる立場になった。姑が私にしてくれたことを、私はこれからお嫁さんたちに返してあげることができるだろうか。

原美子 63 埼玉県越谷市

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ